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元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「SF/サムライ・フィクション」

2006-05-06 18:50:03 | 映画の感想(英数)
 98年作品。江戸・寛永年間。地方の某藩で将軍家から預かった宝刀が浪人者(布袋寅泰)に盗まれるという事件が発生。若い家臣(吹越満)らは討伐に出るが、あえなく返り討ちに遭いそうになる。そこに割って入ったのが腕は立つが平和主義者の田舎侍。ケガをした家臣たちを助けるが、好戦的な浪人は田舎侍の娘(緒川たまき)を誘拐し、果たし合いを強要しようとする・・・・。プロモーション・ビデオ界の風雲児と言われていた(私はよく知らない)中野裕之の監督デビュー作。

 「SF」とタイトルにあるから、てっきり「ジパング」とか「戦国自衛隊」みたいに“超時空活劇”(?)だと思ったら違った。シネスコのワイド画面でしかもモノクロ、ケレン味たっぷりのカメラワークといった意匠を除けば、設定も展開もフツーの時代劇である。ならばその線で批評せねばならないが、出した結果は“奇をてらっただけの駄作”ということになろう。とにかくドラマ作りが下手。どこがどうと指摘するのも面倒臭くなるほど全体として幼稚で粗雑でいいかげんである。

 殺陣がなっていない。チャンバラ映画は殺陣がすべてだ。これではママゴトだ。テレビの時代劇よりヒドい。黒澤明の諸作を観て時代劇を撮ろうと思ったという中野監督、だったら殺陣に目いっぱいこだわるべきだが、それに手を抜いているところを見ると、チョンマゲと着物だけで時代劇を作れる思っているらしい。何より映画をナメているのだろう。

 どうして「SF」にしなかったのか。下手な殺陣も安手のSFXでごまかせるし、そういう設定なら大目に見るかもしれない。また、どうしてコメディにしなかったのか。谷啓扮するロートル忍者と頭のキレた浪人のアホ合戦を延々と流せば、ギャグのセンスをどうこう言う観客はいても、殺陣に難癖つける奴は少なかったろう。布袋が刀の代わりにギターを抜いて一曲歌うなんてのも愉快ではなかったかな。

 とにかく、布袋の筋金入りの悪役面以外には何ら見るべきものがない映画。海のものとも山のものともつかないシロートに映画を撮らせるヒマがあれば、実力ある中堅・若手にもっと作品発表の機会を与えるべきだったね・・・・などと、聞き飽きた「正論」を書き連ねてしまう私である(^_^;)。

 なお、中野監督は後年「RED SHADOW 赤影」などという珍作を撮って以来音沙汰なし。まあ、“その程度”の奴だったんだろう。
コメント
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