元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶ踊れ!アミーゴ!」

2006-05-03 22:10:49 | 映画の感想(か行)

 シリーズ最新作はホラー仕立ての前半部分が印象的。春日部の街の住民が、次々と“そっくりさん”に乗っ取られてゆくというモチーフは、言うまでもなく「SF/ボディ・スナッチャー」のパロディである。しかも、子供向けの番組でこれをやられると、その違和感も相まってけっこう怖かったりする。

 乗っ取られた人間は性格が一変し、しかもサンバを聴くと身体が勝手に動き出すという設定も不気味。特にしんのすけの友人・風間くんの母親がいつの間にか別人になっていて、何気ない日常の中で一瞬おぞましい正体を見せるくだりは、小さい子が見たら引きつけを起こすほどのインパクトがある(そして母親が乗っ取られたことを信じたくない風間くんの純情も泣かせる)。

 野原ひろしの同僚をはじめ、満員電車に乗り合わせた人間がすべて“そっくりさん”になっていたというシークエンスの衝撃度も相当なものだ。

 しかし、後半は「クレしん」らしい脱力的おちゃらけ劇になるのは安心できるというか、拍子抜けというか、まあ“これでいいんじゃないの”と自分に言い聞かせるしかない展開になる(爆)。

 前作「3分ポッキリ大進撃」に続いての登板になるムトウユージ監督は相変わらずアクション場面の作り方がヘタで、活劇場面は隙間風が吹きまくっているが、子供が見るにはちょうど良いのかもしれない。というか、本来子供向けのシリーズに「モーレツ!オトナ帝国の逆襲」とか「アッパレ!戦国大合戦」とか「夕陽のカスカベボーイズ」みたいな、恐ろしくレベルが高く大人の鑑賞にも十分耐えうる作品が存在したこと自体が“イレギュラー”なことかもしれない(まあ、原作は青年マンガ誌に連載されているし、元々厳密な意味での「子供向け」とは言えないのかもしれないが)。今後この水準でシリーズを続けるということになれば、わざわざ劇場で観る必要もなくなるだろう。

 キャラクター面ではいつもの野原一家やカスカベ防衛隊の面々に加え、事件を追うジャクリーン・フィニー女性捜査官の造型がケッ作。ジャージーの胸のあたりに“ツンデレ”と書いてあるあたりは大笑いだ。彼女の属する組織の名前が“SRI”(注)というのも嬉しい。

 ただし“ぶりぶりざえもん”の活躍の場が今回なかったことは実に残念。次作に期待しよう(とは言っても、観るかどうかは分からないけど ^^;)。

注)SRI・・・・往年の特撮ドラマ「怪奇大作戦」(円谷プロ製作)に出てくる怪奇現象を解決するエージェント集団の名前。そういえば、この映画の前半は「怪奇大作戦」に出てきてもおかしくない展開ではある(笑)。
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憲法論議は冷静に。

2006-05-03 09:46:16 | 時事ネタ
 今日は憲法記念日だ。マスコミでは毎年のごとく護憲派と改憲派それぞれの言い分を取り上げているが、最近は改憲が実現性を帯びてきたことから、例年になく盛り上がっているように感じる。

 私のスタンスを明らかにしておくと、憲法改正賛成である。とにかく、あの意味不明の「前文」をはじめとして、浮世離れした空文を排除し、現実に合うように徹底的に作り直して欲しいというのが本音。

 ただし、昨今の改憲論議には諸手をあげて賛成できないというのも、また事実。何やら“憲法を改正すればすべてオッケー”みたいな風潮ではないか。自民党の某有名H議員がテレビで“拉致問題を解決できないのも、不審艦艇が近海をウヨウヨしているのに手を拱いて見ているしかないのも、すべて憲法が原因。だから改正だ”なんてことを言っていたが、そもそも憲法に周辺海域をどうこうしろなんて条文があるわけがないし、今後も入る予定もないだろう。

 我が国には刑法があるし、破防法もある。現行法で出来る限りのことを、やろうと思えばやれる。憲法には“他国に経済制裁をしてはならない”という条文はない。だからその気になれば経済面で北朝鮮を締め上げることも出来る。では、どうしてそれをやらないのか。つまりは政府の怠慢ではないか。だいたい、あのオウム真理教に対して破防法の適用さえ出来なかったほどなのだ。

 私は今の“憲法改正マンセー”という声は、先の選挙の“郵政民営化すればすべてヨシ”といったシュプレヒコールに通じるような気がしてならない。現行法でかなりのところまで追い込めるのに、責任をすべて憲法になすりつけて、責任逃れをしているのではないか。

 “平和憲法を死守しよう。憲法が変われば戦争への道まっしぐら”と唱える左傾政党の主張は世迷い言である。でも、同時に“憲法さえ変われば全部上手くゆく”という物言いも眉唾物であると思う。我々は将来具体的に示されるであろう改正案の一文一文を、そして政府の過去の対応ひとつひとつを冷静に考察し、是々非々で対応すべきだと思う。

 間違っても“護憲VS改憲”の“(中身の精査抜きの)単純二者択一”にしてしまってはならないと思う。そういうのは脳天気に過ぎる。
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