2月は短い。
といっても、ほんの2日か3日短いだけなのに、
ここは特急が止まらず通過する小さい駅のよう。
さてさて、毎年いまごろきまって言い出すのは、
「桜餅が食べたい!」
ピンクのクレープ包みみたいなのじゃなく、
いわゆる「道明寺」のほうの桜餅。
ほんのり桜色に染まった半透明のつぶつぶ。
その下にうっすら紫のこしあんがすけて見える。
関西では道明寺が普通だと思いますが、
関東ではむしろ少数派ではないかしら。
桜の葉は国産に限り、中国産は却下。
と、桜餅に関してはなぜか非常にうるさいのであります。
ひなまつりの頃に桜の葉が出てるわけがないんだから、
あれはとても不自然な食品だ…というようなことを
ある高名な作家さんが書いておられましたが、
それは誤解です。
桜餅の葉っぱは、オオシマザクラの葉。
他の品種より葉が大きくて、しかも柔らかい。
開ききって、かたくなる前の、5月から7月に収穫します。
じゃあそのころが旬なのか、っていうと、
そのあと3ヶ月から5ヶ月ほど塩漬けにして、
ようやくあの香りが出てくるのです。
(だからほんとは冬に「新物」が出るのね)
どうして知っているかというと、峠を越えた隣町に
その桜葉を栽培している場所があるからです。
畑に高さ1メートルくらいの小さい桜の木が
ずうっと並んで植えられていて、
かごをしょったおばちゃんたちが1枚ずつ手で摘んでいきます。
初めて見たときは、何の畑だかさっぱりわかりませんでした。
(ゴボウ畑、コンニャク畑、ミョウガ畑、ヤマイモ畑なども、
最初は何だかわからなかったです)
せっかく産地に近いのに、
地元のお菓子屋さんは「道明寺」を作らない。
こしあんを白いお餅でつつんで桜の葉ではさんだ
細長い大福?みたいなスタイルが主流です。
それも美味しいけど…うーん、やっぱり道明寺ィ…。
ひなまつりを過ぎると道明寺はあきらめますが、
やがて4月の末ごろには
「ちまきが食べたい!」と言い出すわたし。
しかし、ちまきは出回る期間が非常に短いため、
これはたいてい買いそこなってしまうのでした。
(あれこれ言うわりに現実的な努力をしない人なんだ…)