ミモザが満開になったあと、猫柳の花芽が見ごろ。
柳はあちこちにあるけれど「猫」になるのは数本だけ。
一枝もらってきて、一輪挿しにさして眺めている。
どんな植物も新芽は可愛らしいが、猫柳は格別。
銀ねず色のほわほわがなんともいえない。
この段階では、猫にも見えるし、ねずみにも見える。
人差し指の先でそうっとなでる。
あんまりなでると嫌がられそうだ。
やがて枝先から順番にむくむくと花が開き始め、
そうなるとあきらかに「猫のしっぽ」である。
銀白色でなく黒い「黒猫柳」という品種があるそうだ。
くろねこ・やなぎ。
ヤナギという名の黒猫を思い浮かべてみる。
しなやかな細身の若い猫だ。
その妹の名がヨモギ。
ふたりを育てた叔母がエビネ。
親の仇がヤシャブシ。
こういうことを考え始めるとキリがない。
この透明ガラスのごくごくシンプルな一輪挿しが、
もとは醤油入れだった、ということをふと思い出す。
ふたの隙間から漏れやすく、本来の醤油入れとしての
評価はあまり高くなかった。
引退して、第二の人生を送っている。
一輪挿しとしては申しぶんない。
安定感があり、高さも、口の細さもちょうどよい。
探し回ってもなかなかみつからないような一輪挿しだと思う。