枯れ草の根元に、ヨモギの新芽がびっしり出ている。
まだ小さくて柔らかい。
指につまんでヨモギの香をたしかめ、安心する。
もう10年ちかく前になるかと思うけれど、
ある地方で、ヨモギがすりかわっている、
という話を聞いた。
お団子や草もちにする、おなじみのヨモギ。
見た目はそっくり。
でも摘んでみると香りが違う。
香りというより嫌な匂いで、草もちにできない。
ニセヨモギと呼ばれているそうだ。
誰かが気づき、
「ああ、そういえば」とみんなが気づいたころには、
本物のヨモギをみつけるほうが難しくなっている。
どうやら偽物のほうが繁殖力が強いらしい。
その後の話は聞いていない。
今はどうなっているんだろう。
すりかわっている、という表現がすごい。
まるでSFホラーみたいだ。
有名ブランド品のように、偽物を作って
お金儲けができる、というならまだわかるけれど、
雑草のヨモギの偽物をわざわざ作る人はいないから、
これは植物の世界の現象だ。
日本古来のヨモギが変化したのか、
それとも、香りの違う別種が混入したのか。
植物学者キングドン・ウォードの著書には、
香りの良さで昔から人々に愛されていた花が、
いつからか香りを失ってしまった例があげられている。
だからヨモギが突然変異するということも、
なくはない、と思うけれど…。
別種の混入。可能性はこのほうが高い。
外国から輸入された何かに付着して種がまぎれこむ。
クローバーもヒメムカシヨモギもそうして渡来した。
わたしがひそかに疑っているのは、
近年よく見かける「種子吹付け工法」だ。
斜面や川の土手などの工事をしたあと、
土崩れを防ぐために、芝などの丈夫な植物の種子を
大量に吹付け、あっというまに草を生やしてしまう。
コンクリで固めるより自然は自然だけれど、
その種子の多くが輸入品だという。
ああ、たしかその「すりかわっている」地域では
大規模な高速道路の工事が行われていたような…。
似て非なるヨモギ・エイリアン。
うちの周辺にはまだ来ていないようだ。
でも、気づいたときには、きっともう遅い。
(補足)
「ニセヨモギ」のことを聞いたのは2001年のことで、場所は関西地方です。
上の記事の後半はわたしの個人的な推測と感想ですので、
科学的な裏づけはまったくないことをお断りしておきます。
また、その地域では同時期に「アカシアの木」も急にふえたと聞きましたが、
ヨモギとの関連は不明です。
(2009.7.18に追記)