閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

苺の天麩羅

2011-06-01 23:22:43 | 日々

夫人「おほゝ御馳走申した上に料理談までしろと
被仰(おっしゃ)いますか」
記者「いやどうも甚(はなは)だ慾の深いやうですが
お料理は私一人で御馳走になるのですし、お料理談は
婦人世界数萬の読者が御馳走になる譯(わけ)ですから
どうか是非願ひ度いもので」

夫人は嬌面に微笑を含み「それでは暫くお待ち下さい。
色々のお料理を拵へて苺責めにしてあげませう」
と待つ事しばし、苺料理は軈(やが)て卓上に持ち出だされたり。
記者先づ一皿を前に引き寄せ、
「是は何といふお料理で御座います」
夫人「それは苺の天麩羅です」

いきなり漢字だらけの引用で、すみません。
そして、なんでしょうか、苺の天麩羅とは?

記者「是れは何(ど)うしてお拵(こしら)へになります」
夫人「それは先づ苺の取り方からお話し申しませう。
苺を畑から取るには朝でも晩でもいけません。
日中に取りますと香気も味も宜(よ)う御座います」

・・って、レシピをそこから始めるんですか?(笑)

上は、石塚月亭編『手軽實用 弦齋夫人の料理談 第一編』
冒頭の「苺は如何に料理するか」という章から引用。

えーと、この本は、なんでも明治43年の発行らしい。
らしい、というのは、残念ながら実物は持っていませんで、
とある画家さんがお持ちのものを、最初のほうだけですが
コピーしてくださったのです。
これがねえ、めっぽう面白い。

それでは、苺のてんぷらの作り方を。
(長いので、かいつまんで現代語訳で)

1
日中に取った苺は、ざるに入れてゆすぎ洗い、
水を切ってからへたを取る。(これ大事)

2
2つに割って砂糖をたくさんかけて1時間おく。
(「たくさん」としか書いてないんです;)

3
てんぷらの衣は、卵の黄身に砂糖を少し加え、
みりんでのばしてていねいにかき混ぜ、
ウドン粉でもメリケン粉でもさっと加え
(ウドン粉とメリケン粉ってどう違うのだ??)
ねばりが出ないよう、ほんのそうっと混ぜる。

4
ラードまたは胡麻油を熱し、よく沸き立ったところへ
衣に混ぜた苺を、さじですくってすべりこませ、
揚げたら紙にのせて油を切る。
胡麻油の場合は、先にひね生姜を1つ揚げてから
苺を揚げれば軽くできる。

・・ということで御座います。
わたしはまだやってみたことがありませんが、
明治・大正期の奥様方は、本当にこのようなお料理を
お拵えになっていたのでしょうか?

このあと、苺の葛煮、苺のショートケーキ、
(記者これを試みるに味美にして頬の落ちんとするを覚ゆ!)
苺のカスタードクリームかけ、と続く苺づくし。

これが「6月の」お料理であるところもポイントのひとつ。
じつは、うちの畑の苺もようやく採れはじめ、
本日は収穫と草取りでずーっと畑にいたので背中が痛たた・・。

・・と辞して門を出づれば涼風衣を襲うて富嶽の嵐光眉端を撲つ。

(ふりがながなくては読めませんがな;)

コメント
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