突如として「ナポリタン食べたい!」と思う。
昔ながらのスパゲティ。
ケチャップで炒めた赤いやつ。
ナポリタンというもの、子どものころ作ってもらったという記憶はないし、外食で注文したことも、たぶん一度もない。
ときどき学校給食に出たかな、という程度。
特に懐かしいメニューでもないのに、なぜ今になって?
理由はわからないけど、どうしても食べたいので、自己流で作ることにした。
スパゲティを茹でる。
玉ねぎ、にんじんを薄切りにして、ごく少量のオリーブオイルで炒める。
白ワイン、はないので、料理酒を振り、コンソメキューブとケチャップ、ウスターソース少々入れて煮る。
フィッシュソーセージを斜め切りにして加える。
(というのは、わたしは肉類が食べられないからで、ポークハムやウインナソーセージなら、もっと美味しいはず)
ピーマン、もないので、彩りにブロッコリを。
スパゲッティの鍋の湯をちょいちょい足しながら煮込む。
ここに茹で上がった麺を入れ、ざっと炒め合わせて、出来上がり。
美味しかった。
退院後、食事の量が通常の半分くらいに落ちていたけれど、これはけっこう一人前食べました。
いったい何が必要だったんだろう。
ケチャップ?
あとで調べたら、ナポリタンといってもイタリア料理ではなく、戦後アメリカから入ってきたのを日本でアレンジした「和風洋食」であるらしい。
そもそもトマトケチャップってアメリカのものだったとは。
ついでに昔のことを思い出す。
中学校の遠足。
郊外の山の中の川(あいまい表現…笑)で飯盒炊爨ということになっていた。
メニューは班ごとに相談して決め、材料を調達してくるべし、と。
わたしの班はリーダー格の女子が「ナポリタンにしよう」と主張し、話し合いの余地もなく、すんなり決まった。
当日、用意された食材は、人数分のビニールパックの麺と、それに付属した(たぶん粉末の)ソース。だけ。
具材を持ってくる、ということは、リーダー以下誰ひとり思いつかなかったらしい。
デザートのフルーツ缶なんか、あっというまに隣の男子グループに奪われ、オレンジ色に染まった麺だけの「ナポリタン」を、紙皿でもそもそ食べた。
巡回に来た先生も、評価のしようがなく苦笑していた気がする。
わたしは「鍋」の係だった。
うちにある一番大きい鍋をかついで行ったので、一番大変だった。
焚火で真っ黒に煤けてしまい、洗ってもこすってもなかなか落ちず、帰って怒られた。
それもこれも、今となっては懐かしい思い出…とは言わない。
まったく、ろくなことがなかったわよ、あの頃は。