今日から「第56回金沢百万石まつり」で城下町が活気付く。初代藩主前田利家が入城したのを記念して、戦後誕生した市祭だ。 三日間にわたり、お水取りの儀式や献茶式、百万石踊り流し、薪能、子供ちょうちん行列等々、加賀百万石の奥深さを味わうさまざまな行事が繰り広げられる。
メインの百万石行列は、2日、金沢駅から市内目抜き通りを金沢城までをねり歩く。毎年、利家公役を演じる俳優が人気を呼んでいるが、今年は的場浩二を迎える。私の一番のお気に入りは、前夜祭の一つ、「加賀友禅燈ろう流し」。加賀友禅作家が描いた燈籠にろうそくの火がともり、ゆるやかな浅野川の流れに映るさまは、城下町風情を満喫させてくれる。川沿いの料理屋の二階席から眺めれば、まさにお殿様気分だ。今年は、同日、開催される「子供ちょうちん行列」の引率役なので、燈籠流しは断念した。
さて、金沢にはこの祭り以外には、商工色の濃いイベントしかない。これも外様大名の知恵ではないかと思っている。江戸時代、祭りは庶民の唯一の楽しみだっただけに、大勢の人が集まり熱気に包まれる。パワーが結集するので、あらぬ疑いを受ける危険を回避したのではないか。
いっぽう、金箔細工や加賀友禅、九谷焼、輪島塗といった工芸品や宝生流、華道、茶道などの文化が根付いた。その背景に、祭りのような血気を避けた政略・智略が潜んでいたのではないか。また、金沢城の一番守りの手薄な場所に、徳川家康を祀り敵の攻め入るのを牽制している。百万石の外様大名ゆえに、さまざまな面に神経を使っている。祭りを通して、その地方の歴史・風土を覗くのも楽しい。