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「初恋~お父さん、チビがいなくなりました(2019年日本映画)」

2019年05月22日 | 映画の感想・批評
 子供3人が独立し、家を出ていった結婚生活50年を迎える夫婦の物語。その夫婦には、黒猫の「チビ」が同居し、二人と一匹で、平凡な毎日を過ごしている。夫は、定年退職後、会社に顧問という形で仕事を続けているが、脱いだ洋服は脱ぎっぱなし、家事は一切せず、会話は一方的な「メシ・フロ・ネル」だけの典型的な昭和の亭主関白タイプ。一方、妻は、その状況に、大手を振って反論は出来ず、唯一の楽しみはチビとの会話である。足腰が弱くなってきているのか、動作に機敏さは見られない。
 ある日、一番下の娘が訪ねてきた時に、母親が娘に「お父さんと別れようと思っている」と呟いたことから、子供達3人が緊急招集し、母親に問いただすが、その時は、具体的な話には発展しなかった。だが、事件が発生する。既に、チビは行方不明になっていたが、ひたすら、無事の帰りを願っていた妻と、既に、死んでしまっているという夫との間で、明らかな亀裂が浮き彫りになる。妻も本当はもう死んでしまっていると思っているが、それを口にすると認めてしまうことになってしまう辛さがあるのに、それを、理解していない夫。「チビが居なくなって悲しい。そういう同じ気持ちで居てほしかった」妻の発言にハッとする夫。だが、時は既に遅く、妻から夫への「離婚してほしい」と一方的な訴え。原因が分からない夫は、一生懸命考えるが分からず、一つ一つ話を聞く中で、妻が望んでいるものが分かり、自分の気持ちに素直になり、お互いに、優しい顔になっていくのである。この映画タイトルには、原作に加え“初恋“というキーワードは追加されている。それが、ポイントであろう。
 恋愛設定は「昭和」、映画製作は「平成」、投げかけるのは「令和」ということで、3つの元号にまたがる永遠のテーマを描いた作品で、ラストには、「令和」時代にも大きな社会問題になる痴呆・介護という問題にまで踏み込んだ映画だった。
(kenya)

監督:小林聖太郎
脚本:本調有香
原作:西烔子「お父さん、チビがいなくなりました」
撮影:公表データが確認出来ず
出演:倍賞千恵子、藤竜也、市川実日子、星由里子、佐藤流司、小林且弥、小市慢太郎、西田尚美、優希美青、濱田和馬、吉川友他


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