母体搬送受け入れ拒否の理由ではNICU満床が多いです。 実際問題として、児娩出後に直ちに児がNICUに収容されることが確実な状況であれば、NICUが満床の施設は母体搬送の受け入れを拒否せざるを得ません。
しかし、命にかかわる重大な母体疾患の場合は、母体の救命が最優先となりますから、たとえNICUが満床であろうとも、とりあえず母体搬送を直ちに受け入れて、脳神経外科などと連携して母体の救命処置を優先的に実施せざるを得ない場合もあり得ます。
それぞれの患者さんの状況に応じて、母体搬送を受け入れる施設をスムーズに決定する公式ルールを策定する必要があります。ただ、特定の施設の負担だけが著しく増大するようでは、周産期医療の崩壊がかえって促進されるかもしれません。
地方の場合は、緊急母体搬送の受け入れ先は各医療圏でほぼ1施設のみに限定されますので、受け入れ拒否という事態はあまり起こりません。ただ、医療圏によっては、基幹病院の産婦人科医が全員いなくなって産科部門が閉鎖となり、ほぼすべての母体搬送を他の医療圏に搬送せざるを得ないような地域もあります。同じ県内の医療圏であっても、それぞれの医療圏ごとに事情は全く異なりますから、有効な対応策もそれぞれ全く異なります。
****** 共同通信、2008年12月1日
重症妊婦専門病院を指定へ 脳疾患など受け入れ 妊婦死亡問題で都協議会
【要約】 脳内出血の妊婦が東京都立墨東病院など8病院に受け入れを断られ死亡した問題を受け、学識経験者でつくる都の協議会は28日、会合を開き、脳疾患や心疾患を併発するなど重症に陥った妊婦をすべて受け入れる緊急対応の病院を、都内で指定することを決めた。
(共同通信、2008年12月1日)