ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

周産期医療の現場

2009年01月06日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

周産期医療の進歩により、分娩の安全性が以前と比べて著しく高まりましたが、現在でも周産期医療の現場では、一定の頻度で母児の異変が発生しています。時には、どのように対応しても母体死亡や胎児死亡・新生児死亡が避けられない事例も起こり得ます。その事実を国民全体の共通の認識とする必要があります。

現在の日本では、周産期医療に関わる産科医や新生児科医の頭数が圧倒的に不足していますが、もしも、『お産は安全なのが当たり前で、お母さんや赤ちゃんに不幸な事が起これば、何か医療ミスがあったに違いない!』 という認識が浸透して、分娩の現場で何か異変が発生するたびに、たまたま現場に居合わせたスタッフの責任を厳しく追及する風潮がはびこれば、産科医や新生児科医が医療現場からどんどん離れるばかりで、現場の人手不足はいつまでたっても解消されません。

この問題を一病院や一自治体の努力だけで解決しようとしても、絶対に無理だと思います。

根本的には、産科医や新生児科医を大幅に増員しないことには問題は解決しませんが、産科医や新生児科医は急には増やせませんから、当面の緊急避難的対策としては、分娩施設の集約化をさらに進めて、産科医や新生児科医たちがこれ以上疲弊しないような職場環境に変えていく必要があると思います。

また、医療秘書を大幅に増員して、できれば各医師に一人づつ医療秘書を配置し、現場の医師達を雑務から解放することも非常に有効な対策だと思います。

さらに、国策として、若い医学生や研修医たちがこの分野を一生の仕事として選択しやすい環境に変えて、これから周産期医療の現場で活躍する人材を育成することが急務だと思います。

****** 読売新聞、長野、2008年12月16日

新生児対応9病院で、人材育成が急務

【要約】 県内のNICUは、県立こども病院(安曇野市・21床)、信州大病院(松本市・6床)、長野赤十字病院(長野市・9床)、飯田市立病院(飯田市・3床)の4か所。このほか、新生児科医が少なく、24時間常駐できないなど、厚生労働省の施設基準は満たしていないものの、NICUと同等の設備をもつ病室が、県厚生連佐久総合病院(佐久市・12~15床)、波田総合病院(波田町・6床)、諏訪赤十字病院(諏訪市・6床)、県厚生連北信総合病院(中野市・5床)、県立須坂病院(須坂市・4床)にある。夜間の緊急時には医師を呼び出すなどして、NICUに準じた役割を果たしている。

(読売新聞、長野、2008年12月16日)