コメント(私見):
詳しい事情はよくわかりませんが、毎日新聞の記事によると、この4月以降は産婦人科の常勤医がゼロになる見込みだった日立総合病院に、医学部卒業後4年目の女性医師が1人で残留することになったそうです。医学部卒業後4年目ということは、(2年間は初期研修期間ですから、)産婦人科の専門研修を始めてまだ2年目の後期研修医ということになります。
この病院では、1人の産婦人科の常勤医を確保できたので、助産師25人を活用するために「院内助産所」開設の検討を進めるそうです。
産婦人科の常勤医が1人だけだと、その医師は、一年中、昼夜を問わず常に病院の近くに拘束され、風邪で体調の悪いような時であっても、突然、真夜中に呼び出されたりすることになります。しかも、呼び出される時は常に一刻を争うような母児の急変時ですから、麻酔科医、新生児科医、外科系医師などの他科の医師達を招集して、緊急帝王切開などの対応を自分一人の判断でしなければなりません。時には、大量に輸血しながら、決死の覚悟で子宮摘出手術を実施しなければならないような場合も当然あり得ます。
そういう無理な態勢が長続きするとは到底思えません。一人の医師の犠牲的精神や、一つの病院、一つの地域だけの対応では、もはや、この問題を解決するのは非常に困難と思われます。
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産婦人科医が去った後に、多くの助産師が残留し、一般の看護師として働いている病院は少なくありません。 『院内にこんなに大勢の助産師がいるのに、分娩を全く取り扱えないというのはもったいない!昔はほとんどのお産を産婆さんが取り扱っていたんだから、正常分娩だけに限定すれば、助産師だけでも何とかなるのではないか?』 と病院上層部が考えて、院内助産所開設を検討し始める話はよく聞きます。
最近は、当医療圏でも集約化がだんだん進んできて、当院にも40人近い助産師が在籍し、月に百件前後の分娩を取り扱うようになってきました。長期的には産婦人科医の頭数も毎年だんだん増えてきてますが、当然ながら、個人的理由で辞めていく人もいます。もしも、突然、なんかの加減で産婦人科医が自分一人きりになってしまった場合は、分娩の取扱いは絶対に継続できないと観念しています。
産婦人科医の頭数が不安定で、毎年毎年、科の存亡の危機に見舞われて綱渡り状態が続くようでは、科としての社会的責任を十分に果たしていけません。産婦人科医の頭数を今後も永続的・安定的に維持していくためには、一つの病院や一つの医療圏単独の対応では大きな限界があります。やはり、県内の他の医療圏とも十分に協調して困った時には互いに助け合い、地元大学の産婦人科とも良好な関係を保っていくことが非常に重要だと考えています。
危険過ぎる日立総合病院の判断
(まーしーの独り言)
日立総合病院に産科医1人が残留、院内助産所付き…、勇気は賞賛しますが…
(うろうろドクター)
****** 毎日新聞、茨城、2009年1月22日
日立製作所日立総合病院:産科医1人が残留 分娩を継続へ
◇ハイリスク対応は困難
今春以降の常勤産科医の確保が不透明な状況となり、昨年夏から分娩(ぶんべん)予約を取りやめている日立市の日立製作所日立総合病院(日製病院)で、若手の常勤産科医1人が4月以降も残留することが決まった。医師派遣元の大学病院は常勤産科医4人全員を大学に戻す意向を示していた。病院側は「最悪の事態は避けられた」と、分娩を受け入れていく構えだが、1人ではハイリスク分娩への対応は難しく、広域医療に及ぼす影響は必至だ。【八田浩輔】
07年の日製病院の分娩数1212件は県内最多。24時間体制で急を要する妊婦や新生児を受け入れる県北地域の地域周産期母子医療センターにも指定されている。06年に8人いた常勤の産科医は現在半減。派遣元の東京大病院の要請で、昨年夏に産科医全員が今年3月で大学に戻ることが決まると、4月以降の分娩予約の一時中止を決め、院内の掲示板やホームページで告知した。以降、病院は、県や市とともに、都内の私立医大などに医師派遣の要請を続けていた。
病院によると、今回残留が決まったのは卒業後4年目の女性医師。昨年末に本人が残留の意向を示し、東大病院も了承したという。常勤医が確保できたことで、約25人の助産師を活用するため、県内では初めてとなる「院内助産所」開設の検討を進める。
一方、周産期医療の「最後の砦(とりで)」であるセンター機能を維持することは容易ではなさそうだ。「正常分娩は何とか周辺地域で吸収できている。問題はハイリスクだ」。水戸済生会総合病院・総合周産期母子医療センターの山田直樹医師はこう指摘する。日製病院の年間の母体搬送は約50件(07年)。半数以上が県北以外の地域からの搬送だった。「県内全体のマンパワーがない。ハイリスクの受け皿が無くなると、(正常分娩を担う)1次医療機関も機能しなくなる」(石渡勇・県産婦人科医会顧問)との懸念もある。
日製病院は、OBや民間の医療人材派遣会社など複数のルートを頼りに、引き続き医師確保に努めている。最終的な常勤医の人数が固まり次第、2月中にも来春以降の体制について公表する予定だ。
(毎日新聞、茨城、2009年1月22日)