Cervical Cancer
[定義] 子宮頚癌は子宮頸部に発生した悪性腫瘍で、扁平円柱上皮境界(SCJ)に多く、組織学的には扁平上皮癌が約85%、腺癌が約15%を占める。近年、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染との関連性が明らかとなった。多産婦に多く、若年者に多いのが特徴である。
[発生頻度] 子宮頚癌は、20~30歳代の女性における悪性腫瘍罹患率第1位であり、妊娠・出産の高齢化もあって、悪性腫瘍の中で妊娠に合併することが最も多い。
全妊婦の0.05~0.5%にみる。 子宮頚癌の1~3%は妊婦に発見される。 妊娠合併子宮頚癌は近年増加傾向にある。
[妊娠合併子宮頚癌に対する対応]
治療は母体予後、胎児予後、挙児希望の有無を考慮する。
妊娠によって浸潤癌の進展が助長されることはないとされているものの、早期癌の場合予後に差はないが、進行例では非妊時より予後が悪いとの報告がある。
分娩後に診断された進行例は予後不良であるとの報告がある。
[妊娠前に注意すること]
妊娠合併子宮頸癌例の平均年齢は非妊娠症例より10歳若いと報告されている。
発症年齢若年化から、妊娠前の10~20 歳代からの定期的な検診が望まれる。
高度異形成~上皮内癌の症例は、妊娠前に円錐切除しておくことが望ましい。
妊娠初期に確実に診断をつけることが肝要である。
[妊娠継続が許容される条件]
①上皮内癌(CIS)では、妊娠継続が可能である。経腟分娩を行う(産科適応)。
②微小浸潤癌(Ⅰa1期)では、円錐切除術を実施し、病理検査で脈管侵襲陰性であれば、十分なインフォームド・コンセントを得た上で、胎児成熟あるいは満期まで待って経腟分娩を行う(産科適応)。妊娠経過中は1~2 か月ごとに細胞診と腟拡大鏡診(Colposcopy)を行う。
[妊娠中に円錐切除術を実施する適応]
①組織診で微小浸潤癌である。
②組織診では上皮内癌までであるが、細胞診で浸潤癌を疑う所見がある。
③組織診が上皮内腺癌である。
④数か所の狙い生検では正確な診断ができない可能性のある、病変の広がりが大きい上皮内癌の症例。
※ 円錐切除術後の症例については早産ハイリスク群と認識する。早産徴候に注意して管理し、症例によっては頸管縫縮術を考慮する。
[異形成、上皮内癌、微小浸潤癌の管理]
[浸潤子宮頚癌の治療]
Ⅰa2期以上の浸潤子宮頚癌であれば、基本的に母体の治療を優先させる。
・ 妊娠21週までは、妊娠子宮のまま広汎性子宮全摘術あるいは放射線治療(and/or化学療法)を実施する。
・ 妊娠22週以降は、帝王切開術後に広汎性子宮全摘術あるいは放射線治療( and/or化学療法)を実施する。
[子宮頚癌 0期]
浸潤が認められない上皮内癌 (CIS:Carcinoma in situ)
異形成(前癌病変)や上皮内癌では、症状を呈することはなく、子宮頚癌検診(子宮頸部細胞診)にて発見されることが多い。
0期の治療としては、挙児希望の有無にかかわらず、円錐切除術のみを希望する女性が増えている。
[子宮頚癌 Ⅰa期]
Ⅰ期:癌が子宮頸部に限局するもの。
Ⅰa 期: 組織学的にのみ診断できる浸潤癌。浸潤は、計測による間質浸潤の深さが5mm以内で、縦軸方向の広がりが7mmをこえないものとする。浸潤の深さは、浸潤がみられる表層上皮の基底膜より計測して5mm をこえないものとする。脈管(静脈またはリンパ管)侵襲があっても進行期は変更しない。
・ Ⅰa1期: 間質浸潤の深さが3mm 以内で,広がりが7mm をこえないもの。
・ Ⅰa2期: 間質浸潤の深さが3mm をこえるが5mm 以内で、広がりが7mm をこえないもの。
[子宮頚癌Ⅰa期の治療]
①円錐切除術・・・Ⅰa1期、挙児希望あり
②単純子宮全摘・・・Ⅰa1期、挙児希望なし
③広汎性子宮全摘・・・Ⅰa2期
施設によってはⅠa2期においては準広汎性子宮全摘術を行うこともある。
※広汎性子宮頸部摘出術(Radical Trachelectomy)・・・挙児希望のあるⅠa2期~Ⅰb1期(病巣の直径≦2cm)の患者に対して、十分なインフォームドコンセントを得た上で行われる場合がある。
[子宮頚癌Ⅰb期]
Ⅰb期: 臨床的に明らかな病巣が子宮頸部に限局するもの、または臨床的に明らかではないがⅠ a期をこえるもの。
・ Ⅰb1期:病巣が4cm 以内のもの。
・ Ⅰb2期:病巣が4cm をこえるもの。
[子宮頚癌Ⅰb期の治療]
①広汎性子宮全摘術(Radical Hysterectomy)
②放射線療法(Radiotherapy) ・・・高齢、合併症などにより手術困難なⅠb期の症例にも行われる。