● 呼吸器系の適応
① 胎盤におけるガス交換:
胎児のガス交換は、胎盤絨毛間腔(intervillous space)で母体血と胎児血とのガス分圧の差による拡散によって行われる。
胎児の血液は、赤血球数が増加(多血)し、酸素親和性の強い胎児ヘモグロビン(HbF)が主体となっている。
② 出生後の第一呼吸、第一啼泣:
第一呼吸開始のメカニズムについてはいまだ明らかになっていないが、寒冷、接触、音、光などの刺激のほか、胎盤循環停止による酸素と二酸化炭素分圧、pHの変化が呼吸中枢に感知されることにより開始すると考えられている。
第一呼吸によって肺に空気が流入し、肺が開き第一啼泣が起きる。このとき児は声門を少し閉じて泣くため、呼気に陽圧が加わり肺胞を確実に開くことができる。
呼吸開始とともに、肺の血管抵抗が急速に減弱し肺血流が増加、肺でのガス交換が確立する。
③ 肺液(lung fluid)の排出、吸収:
産道通過時に胸郭が圧迫され、肺液は鼻腔、口腔から排出される。
肺に空気が入るのと同時進行で、肺液は肺胞腔から間質へ、さらに毛細血管やリンパ管に吸収されていく。
● 循環系の適応
① 胎児循環(fetal circulation):
・ 右心房(right atrium)に上大静脈(superior vena cava)と下大静脈(inferior vena cava)が還流する。上大静脈は静脈血であるが、下大静脈には胎盤で酸素化された血液が静脈管(ductus venosus)を通って流れ込んでいる。
・ 右心房に流入した酸素分圧の高い血液は卵円孔(foramen ovale)を通って左心系に入る。
・ 上大静脈からの酸素分圧の低い血液は右心房から右心室(right ventricle)へ入って肺動脈(pulmonay artery)へ流れる。
・ 肺動脈血流は動脈管(ductus arteriosus)を通って下行大動脈(descending aorta)に合流する。
・ 下行動脈の血液の一部は内腸骨動脈(internal iliac artery)から分枝する臍帯動脈(umbilical artery)を経て胎盤に至り、再び酸素化を受ける。
② 新生児循環への変化
1. 肺動脈が開く。
2. 卵円孔が閉鎖する。
3. 動脈管が収縮する。
4. 動脈管が閉じる。
5. 臍帯動脈が閉じる。
6. 胎児循環がなくなる。
③ 新生児循環の特徴
・ 動脈管は低酸素症で容易に再開通する。
・ 卵円孔は低酸素症で容易に再開通する。
・ 肺動脈抵抗がまだ高く、しばらくは右心系の負荷が残る。