patent ductus arteriosus (PDA) due to prematurity
動脈管は成熟児では生後1~2日で閉鎖するが、早産児では在胎週数が若いほど閉鎖しにくい。動脈管を介する左右短絡血流による肺血流量増加に未熟な心臓は耐えられずに心不全をきたしやすい。また動脈管を介する左右短絡血流による体血流量減少は未熟な全身臓器で虚血性病変を生じ得る。
動脈管閉鎖遅延の早産児で、肺血流量増加による心不全症状や肺うっ血に伴う呼吸障害、体血流量減少に伴う尿量減少や消化管機能低下症状などがある場合に症候性の未熟児PDAと診断する。
● 頻度
在胎週数が若ければ若いほど、出生体重が少なければ少ないほど発症頻度が高くなる。在胎27週以下では約40~50%が発症、RDSを合併した例ではさらに発症頻度が高くなり、56%に未熟児PDAが発症したとの報告がある。
● 病因
未熟児の動脈管閉鎖遅延が、未熟児PDAの原因である。未熟性がその最大の素因である。
● 症状 (生後数日の早産児)
拡張期血圧の低下、bounding pulse(脈圧の増大)、尿量減少、心雑音(連続性雑音)、心尖拍動、頻脈、呼吸障害、腹部膨満、代謝性アシドーシス、肺出血など。腎不全、壊死性腸炎、消化管穿孔などの要因となり得る。
● 検査成績
① 心エコー:
PDAは左肺動脈-主肺動脈接合部と下行大動脈の間にある。カラードプラー法を用いると容易に肺動脈内に左右短絡血流を検出することができ、これをガイドにするとPDAが直接描出される。短絡血流量の増加に伴って左房、左室、上行大動脈の拡大が観察される。ドプラー法で示される短絡血流の最大流速により肺高血圧症の程度が評価できる。
② 胸部Xp:
左右短絡血流量が多い場合、肺血流量の増加に伴って肺血管陰影が増強し、左房、左室の拡大による心陰影の拡大、上行大動脈の拡張を認める。
● 治療
未熟児PDAにおける動脈管の収縮を促す治療としては、インドメタシンが保険適応となっている唯一の薬剤である。
インドメタシン0.2mg/kgを12~24時間ごとに3回静注するのが1クールであるが、閉鎖した時点で以後の投与は中止する。
インドメタシンはプロスタグランジンの生合成を抑制することで動脈管の収縮を促す。副作用としては乏尿・腎障害、低血糖症、血小板機能低下、消化管穿孔などがある。インドメタシンの動脈管収縮効果は投与量依存性であるが、重篤な副作用も有するため少量投与が原則とされている。インドメタシンを使用するに当たっては、動脈管閉鎖のことばかりでなく副作用の発現への注意が必須である。
インドメタシンが無効のときは、外科的結紮またはクリッピングを考慮する。
●予後
インドメタシンを使用した薬物学的閉鎖は80~90%の症例で有効である。閉鎖した動脈管が再開通するものもある。自然に閉鎖するものもある。