世間の暗がりから手を出して
少しでも自分の嘘を長持ちさせようと
馬鹿なことをしてはなりません
真実は白い鳩の羽毛のように
音もなく降り積もり
あなたが造った虚偽の牙城を
少しずつ包みこんでいく
そして死にながら生きている
自分の幻を
ヴェールのように被りながら
あなたは自分が凍えようとしているのを
ようやく肌に感じ始める
青い薔薇を 真珠の棺の中に納めなさい
死者のためにではなく薔薇自身のために
薔薇が 青ければ
薔薇は 生きている意味がない
なぜなら 薔薇は
真実の熱い愛の姿でなければいけないからです
生命のたぎる血の象徴でなければいけないからです
青い色は 薔薇の生きる意義を強く剋する
効き目の緩やかな毒薬のように
自らの色が薔薇を少しずつ殺していく
神の奇跡と偽って咲かせた青い薔薇が
増えてゆくたびに
この世に奇妙な死がはびこって行く
生きているのに死んでいる
死んでいるのに生きている
呆れかえるほどたくさんの
贋金をつぎこんで
造りあげた自分の城が
白い真珠の薔薇が一輪
庭の隅に咲いただけで
生きたまますべてからっぽの嘘になった
あっても 意味がないものになった
おそろしい馬鹿だ
人間ではない人間という
この世にあり得るはずのないものに
人間はなろうとして
自分以外のきれいなものは
すべて殺そうとして
世間につきとおそうとした嘘が
なだれのように今 自分にふりかかってくる
青い薔薇を 真珠の棺の中に納めなさい
死者のためにではなく薔薇自身のために
月の蜜を 一しずく入れた飴薬を
青い薔薇を浸している水に入れ
菫色をした生と死の国境を
苦しむことなく超えさせ
あらゆる虚偽とともに
楽に死なせてあげなさい
人よ
生きたまま死んでいるということは
生きること自体が
自分を殺しているということです
あなたは
あなたではないものになろうとして
生きれば生きるほど
本当の自分を殺しているのです