あなたは
詩を書くのが好きでした
虹色の鉛筆で
小さなビーズ細工のように
奇麗な言葉をつないで
美しい詩を織るのが好きでした
誰もほめてはくれなかった
時には苦い評論家の嘘に悩まされて
詩がまったく書けなくなったときもあった
苦しいはずなのに
苦しいとも思わなかったのは
もっと苦しいことがあって
そのことを苦しむ暇がなかったからでした
わたしは
白い小さな蝶をつかまえて
細い筆であなたのために
あなたの詩は美しいと言う印を翅に書いて
箱庭の中に飛ばすのです
小さな箱庭の中で
あなたの夢は緑の魚のように
静かに泳いでいる
その姿そのものが
不思議な詩のことばのようだ
泡のように静かな声で何かを歌っている
歌は流れていくほどに
箱庭の中の空気が清らかに澄んでくる
愛のわからない無粋な評論家の
嫉妬を含んだ棘のあることばなど
忘れてしまいなさい
詩は理論で書くものではない
自分の魂の中にある
美しい貝殻のような愛のかけらをひろって
ビーズ細工のように織り上げて書くものだ
あなたのことばはやさしかった
花のような愛を色とりどりに並べて
見ているだけで心が澄んでくるようだった
甘い飴を皆に配るような
美しい愛がそこに生きていた
けれど人間はそれに気づくことさえできなかった
それどころか
みんなで一斉に泥を投げつけて
美しいものを無理に汚いものにしようとした
だからわたしは人間を許しません
何度謝って来ても
許しません
ああ 白い蝶があなたの夢にとけていく
あなたの胸に刺さった棘が
また少し 消えてゆく
もう一度 手紙を書いてあげましょう
何度も書いてあげましょう
あなたのために いいことは
わたしはなんでもしてあげましょう
真っ白な蝶の翅に きれいな印を描いて
あなたの心に届けましょう