月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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エダシク・8

2017-08-06 04:14:56 | 詩集・瑠璃の籠

黄昏になると
蒼白い老爺があなたを訪ねてくる

あのときなぜ
妻が摘んできてくれた林檎を
色が青くてまずいなどと言ったのですか
あのときなぜ
子が釣って来てくれた魚を
小さくてみっともないなどと言ったのですか

知らぬはずはない
ごまかせはしない
あなたは
自分がつらかったのだ
勉強をしていない自分の恥ずかしさを
つかれて馬鹿にされるのがいやで
人を馬鹿にしてばかりいたのだ

あのときなぜ
一番きれいな少女に
あんなものはドクトカゲみたいに醜いと
言ったのですか

知らぬはずはない
ごまかせはしない
愛して
求めても
自分を訴えていく力さえ
自分にはないと思い込んでいるから
何もできない
その激しい辛さを
あなたは少女を憎むことで晴らそうとしたのだ

愚かなことよ

黄昏になれば
その真意を尋ねにくる
蒼白い老爺があなたの元に来る
そして問いただす
答えられなければ
最も苦い玉をあなたに飲ます
これは
決して愛さなかった
馬鹿なのだというしるしを

それを飲めばもう
誰にも愛されない
不可思議な氷のような人生を
ひとりで生きねばならなくなるのだ




コメント
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