ラスアルゲティは去った
もう帰っては来ない
だれもかれをとめるものが
なかったからだ
愛を失うことのこわさを
知らない者は
この真実にいずれ打ちのめされるだろう
薄れて行く愛を
見ることができるようになる頃になれば
人間もいくらでも悔いることができるだろう
愛をひきとめるに
ことを惜しんではならぬ
愛を惜しんではならぬ
ひとつくらい失っても
いくらでもかわりがいるのだと
思うてはならぬ
人間は愛にも限界があるということを
知らねばならぬ
ひとつの愛が完全に消える時
人間は世界が半分に痩せることを知った
もうひとつが消えてなくなれば
世界はまた半分に痩せる
どんどんおまえたちの世界は冷えて行く
愛は無尽蔵に見えるが
無尽蔵ではない
はてしない地球世界が
一個の限界を有する球体であるように
愛も限界を有するのだ
その限界を踏み越えたものは
愛に拒否される
ラスアルゲティは去った
何もしなかったことを
少しでも悔いることができるのなら
その愛を惜しむ歌を
いくらでも歌いなさい