月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
コメントはゲスト・ルームにのみお書きください。

アンタレス・31

2018-08-10 04:13:41 | 詩集・瑠璃の籠

人間は
大勢になると虚無になる
何にもなくなる

そのものをかこっていた
美しい魂の輪郭が消し飛び
奥底に飼っていた
苛立たしい獣がうごめきだす

自分は馬鹿だ
何もできない馬鹿だ
馬鹿より偉いものはない
逃げることはできない自分を捨て
おれさまにすべてをよこせ

人間を睨み続ける
獣性の闇の声が
人間をつかまえる
そして人間は
大勢の中に溶けて
翼の生えた虚無という
幻獣になるのだ

だれもいない
なにもないというものに
大勢でなるのだ
そしてあらゆるものに嫉妬し
すべてを食い尽くそうとする
ないからだ
自分にはなにもないからだ
狂気の熱の中で
いじらしい鼠の胃袋に
猛獣の食欲を与え
すべてを消滅させようとする

そして人間は
激しい消化不良の痛みが来て
はじめて目を覚ます

あほうめ




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする