五感で観る

「生き甲斐の心理学」教育普及活動中。五感を通して観えてくるものを書き綴っています。

バルテュス展所感

2014年05月03日 | 第2章 五感と体感
古典から模索が始まるのは、どの時代も同じ傾向にあるようですが、どんなジャンルにおいても古典の表現を学んでいない人は、明らかに薄さを感じます。
歴史が好きとか嫌いとかの問題で無く、古典を学ぶ情動が湧いてくると自分の作品にそれが投影され、厚みを含んだ芸術が生まれていくものなのだと思っています。

バルテュスは、私にとって現代の画家として生きながらにして伝説的な画家でありました。
芸術家の両親から生まれ、その後、母親はリルケの恋人となり、バルテュスは想像と現実両方を兼ね備えた生育歴を辿ります。

個人の美の追求は、他者から見れば理解に苦しむものもあるかもしれません。

今回のバルテュス展は、20年前の展覧会とは違い、とても練られたものとなっています。
一つの作品に関するエスキースや情報が丁寧に展示されており、バルテュス自身を知る上でとても勉強になる展覧会です。

私個人的には、バルテュスの想像の中に入り込んでしまったような面白い感覚を得ながら、展示を拝見しました。
作品という結果のみを見ることも大事でしょうが、作品の背景を垣間見ながら作者と共に想像を漂う事ができる時間はとても楽しい時間です。

ピエロ・デッラ・フランチェスカの模写から始まる展示は、ちょっと昔の美大生が必ずといって良いほど通る通過儀礼のようなものと重なり、現代の画家バルテュスに親近感を感ずる一つであるかもしれません。

幻想の画家シャガールと同じく、作風のイメージは他者が決めるものではありません。
本人のリアリティが作品を生んでいくわけで、ただし、そこから社会へ独り歩きしていくことで他者のイメージが画一化されていくことも自然な成り行きでありましょう。

バルティス自身の情動を知る上で、とても勉強になった展覧会でした。

今回の展覧会もキューレターの方々の実力を見せてもらったように感じました。
ここ数年、規模の大きい美術展に書物の編集と同じものを感じています。今回も一冊の本を読み終えた様な感覚があります。
そうであるからゆえ、展覧会の見せ方次第で、鑑賞者の印象が左右されます。

「現象=作品」の背景にあるミステリアスなものをどのあたりから鑑賞者に放り投げるか、という課題もこれからのキューレターに課せられそうです。

奥様節子さんは、バルテュスの生前は、雑誌などに頻繁に着物を着た姿で登場されていました。きっとそれで御存じの方も多いかもしれません。現在も変わらずお綺麗です。デザイナーのお嬢さまもいと美し。
バルテュス自身の袴姿のお写真も素敵でした。十字軍の騎士の様な?パッショニストのような?祭服姿も妄想の域に入り込んだダリと同じような滑稽さを感じ、展示最後の写真の数々は、とても楽しかったです。

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