12日は阪神競馬場で2歳女王決定戦の阪神ジュヴェナイルフィリーズが行われましたが、香港・シャティン競馬場では年末恒例の「香港国際競走2021」が開催。毎年日本馬の活躍が目立つこのイベント、今年はラヴズオンリーユー、レイパパレ、グローリーヴェイズらが参戦しました。
シャティン4R・香港ヴァーズ(GⅠ・芝2400m 8頭立て)は、日本から2019年覇者②グローリーヴェイズと④ステイフーリッシュの2頭が出走。海外勢は①パイルドライヴァー(英国)、昨年の優勝馬⑤モーグル(アイルランド)、⑧エベイラ(フランス)、香港からは③コロンバスカウンティ、⑥リライアブルチーム、⑦バターフィールドが参戦。
スタートは8頭綺麗に飛び出し、正面スタンド前でのポジション争いでリライアブルチームが先頭、ステイフーリッシュ2番手、パイルドライヴァー3番手。モーグルは5番手、グローリーヴェイズは最後方でゴール板を通過する。
1,2コーナーを回ったところで縦長となり、向正面でリライアブルチームが先頭、2番手ステイフーリッシュ、3番手パイルドライヴァー、4番手エベイラ、5番手モーグル、6番手コロンバスカウンティ、内側7番手グローリーヴェイズ、最後方にバターフィールド。残り1000mを切ってフーリッシュがリライアブルに並びかけるが、リライアブルが譲らない。3番手のパイルが前の2頭との差を詰める。モーグルは5番手、ヴェイズはまだ後方2番手のまま。
4コーナー手前で、外に持ち出したパイルドライヴァーが、ステイフーリッシュとリライアブルチームをまとめてかわして先頭に浮上。エベイラも2番手に上がり、ステイフーリッシュ3番手に後退。グローリーヴェイズは大外から一気に追い上げる!残り300mで抜け出したパイルは後続を少し引き離すが、残り200mでヴェイズが2番手に上がると、残り100mでパイルに並び、ゴール前でパイルドライヴァーをかわして先頭ゴールイン!グローリーヴェイズが香港ヴァーズ2勝目を手にしました!
香港国際競走の最初のレースは、グローリーヴェイズが鮮やかな差し切り勝ちで優勝。2年ぶりのGⅠタイトルを手にしました。4コーナーで先頭に立ったパイルドライヴァーは1馬身差の2着、3着にはエベイラが入り、コロンバスカウンティが香港勢最先着の4着。もう1頭の日本馬・ステイフーリッシュは5着、前回覇者のモーグルは6着でした。
グローリーヴェイズは2020年の京都大賞典以来となる通算6勝目。重賞も4勝目となりました。鞍上のジョアン・モレイラ騎手はこのレース3勝目。2016年はサトノクラウンを初GⅠに導き、2年前もヴェイズとのコンビで勝利を収めました。
前回勝ったときは、ラッキーライラック、ディアドラ、香港馬・エグザルタントといった強敵を破り、2着に3馬身半差の圧勝。今回は後方2番手を追走し、ラストの直線で大外から追い込みを見せました。ゼッケンも2年前と同じく「2番」でしたね。シャティンでは今年4月のクイーンエリザベス2世カップでも2着。シャティンだけでは連対率100%です。グローリーヴェイズも来年で7歳を迎えるので、この勝利を最後に引退するか、現役続行かは未定。現役続行ならドバイか春の天皇賞、それかQE2世を目標とするでしょう。
シャティン8R・第35回香港カップ(GⅠ・芝2000m 12頭立て)は、これが引退レースとなる⑫ラヴズオンリーユー、大阪杯を制した⑪レイパパレ、今年重賞2勝④ヒシイグアスの日本勢3頭に加え、チャンピオンズ&チャターカップを制した②パンフィールド、①カーインスター、③グロリアスドラゴンの香港勢、英国チャンピオンステークス2着⑧ドバイオナー(英国)、同レース3着⑨マックスウィニー(アイルランド)、⑩ボリショイバレエ(アイルランド)の欧州勢も参戦しました。
スタートで②パンフィールドがポンと出たが、真ん中からカーインスターがハナに立ち、グロリアスドラゴンとボリショイバレエが2,3番手、ラヴズオンリーユーも先行策。レイパパレは中団馬群、ヒシイグアスは後方で1コーナーを通過していく。
先行争いは1,2コーナー中間を過ぎても続き、向正面に差し掛かったところでボリショイバレエが先頭を奪い、カーインスター2番手、3番手のマックスウィニーまでが先頭集団を形成。グロリアスドラゴン4番手、ラヴズオンリーユーは5番手追走。6番手グループにはパンフィールド・⑤ロシアンエンペラー(香港)が並び、8番手にレイパパレが控える。後方には9番手ドバイオナー、10番手⑦ベルリンタンゴ(香港)、ヒシイグアスが11番手に上がり、⑥トゥールビヨンダイヤモンド(香港)が最後方に下がる。
3コーナーを回り、カーイン先頭、ボリショイ2番手、3番手グループにラヴオン・グロドラ・ウィニーの3頭が並び、3,4コーナーでラヴオンが5番手に下がる。パパレは中団馬群の中、イグアスはまだ後方2番手。
4コーナーから最後の直線に差し掛かって、先頭争いは内で粘るカーインスター、真ん中ボリショイバレエ、外からロシアンエンペラーと3頭が横一線。ラヴズオンリーユーはまだ馬群の内側。残り300mでロシアンが先頭に躍り出る。しかし、残り200mでヒシイグアスが大外から襲い掛かると、ラヴオンもようやく上がってきた。残り100mでロシアン・ラヴオン・イグアスの3頭が並ぶと、残り50mでラヴオンが間から抜け出し、イグアスも競りかけるが、ラヴズオンリーユー1着ゴール!ヒシイグアスは僅差で2着になり、日本馬ワンツーフィニッシュ!
メインの「香港カップ」は、ラヴズオンリーユーがヒシイグアス、ロシアンエンペラーとの叩き合いを制して優勝。前走の「ブリーダーズカップフィリー&メアターフ」に続いてのGⅠ連勝で引退の花道を飾りました。これで香港カップは2019年のウインブライト、2020年のノームコア、今年のラヴズオンリーユーと3年連続で日本馬が優勝。牝馬に至っては2年連続です。
2着のヒシイグアスはアタマ差及びませんでしたが、海外GⅠ初挑戦で大健闘。モレイラ騎手の魔法に導かれて会心の走りをしたけれど、ラヴオンの勝負根性が一枚上手でした。3着には地元香港馬のロシアンエンペラーが入りました。日本のレイパパレは6着。先行ではなく中団待機策を選んだけど、直線で前が開かず大苦戦しました。
ラヴズオンリーユーは今年だけで海外GⅠ3勝目。日本馬の海外GⅠ3勝は、モーリスとエイシンプレストンと並んで最多タイ記録ですが、「海外GⅠ年間3勝」は史上初の快挙です。鞍上の川田将雅騎手は香港GⅠ初勝利。矢作芳人調教師は香港GⅠ2勝目となります。先日のジャパンカップでコントレイルが有終の部を飾り、それから2週間後にラヴオンもラストランで勝ちました。2019年のリスグラシューから始まった矢作厩舎の黄金時代も、2トップの引退により終止符を打つことになるだろう。
直線で抜け出すのに苦労する場面がありましたが、残り200mからの追い上げは本当に素晴らしかった。ゴール前で間から伸びてくるシーンはBCの再現かとおもいました。まだ有馬記念が残っているけど、「年度代表馬」と「最優秀4歳以上牝馬」争いでラヴオンが頭一つリードしました。「国内のGⅠを勝っていない」という声もあるけど、海外のGⅠを3勝したのは普通に凄い実績だと思います。
日本馬の活躍が目立った一方で、心配なニュースが飛び込んできました。香港スプリントで4頭が落馬する事故が発生し、日本から参戦した②ピクシーナイト、香港馬の⑤ラッキーパッチ、⑧ナブーアタック、⑨アメイジングスターの4頭が競走中止。ダノンスマッシュもあおりを受けましたが8着で完走しました。
香港の現地メディアによると、この事故でアメージングスターとナブーアタックが予後不良。ピクシーナイトも左前膝を骨折、右トモを捻挫していたことがシルクレーシングのSNSで公表。また、ピクシーナイトに騎乗した福永祐一騎手も左鎖骨骨折を負いました。ピクシーナイトは今後の短距離界を引っ張っていくことを期待していましたが、落馬事故により競走馬生活の危機を迎える羽目に。福永騎手もひとまず無事でよかった。ピクシーと福永騎手には一日も早い完治と復帰を願うばかりです。