どっと屋Mの續・鼓腹撃壌

引き続き⋯フリーCG屋のショーモナイ日常(笑)

小津安二郎の意思

2016年01月25日 19時40分00秒 | 映画
名高い名作「晩春」と「麦秋」の間に作られた異色な存在である「宗方姉妹」。

新東宝という労働争議から生まれた特殊な事情を持つ映画会社でメガホンと取ったこともあり、俳優陣も東宝系な感じで異色だし、独特の雰囲気と面白さがある作品です。

10年ほど前にNHK-BSで放送したものを録画保存していて、たまに引っ張り出して観ていたのですが、画像の不鮮明さに加えて音声が非常に聴きとりにくく、この度思い切ってDVDを購入しました。松竹のと比べて倍もする割高さ(^_^;

でもまぁ...これが「晩春」や「東京物語」のように4Kスキャニング・リマスタリングなんて、夢のまた夢...まず無いだろうと考えて割り切りました。

まぁ金だして買っただけのことはあって、画像もある程度の修復はされているようですし、シーンによってはハッとするほど鮮明(^_^)

音声はそれほど改善されてないけど、字幕があるので有り難いです。

私的に好きなシーン(^_^)

ダメな旦那にそれでも貞淑な妻であろうとする姉・田中絹代に苛立つ妹・高峰秀子とが口論しているところ...。

妹「古いわよ、古い古い!お姉さん古い!」

姉「ねぇ...あんたの新しいってこと、どういうこと?」

姉「あたしは古いくならないことが新しいことだと思うのよ...ほんとに新しいことは、いつまでたっても古くならないことだと思ってんのよ」

姉「あんたの新しいってことは去年はやった長いスカートが今年は短くなるってことじゃない。みんなが爪を赤くすれば、自分も赤く染めなきゃってことじゃないの?明日古くなるもんだって、今日だけ新しく見えさえすりゃあんたそれが好き?」

妹は何も言えなくなってしまいます...。

これは前作「晩春」が賛否両論を受け、社会性を無視した現実逃避とか時代錯誤などと批判されたことに対する強い反論でもあるワケなんですが、今もって全くそのまま通用するメッセージです。

今の視点で観ると小津安二郎一連の作品は時代性をあえて削除したことにより、どの時代においても普遍性を持ち、全く色あせることなく観る者の心に響いてきます。

こんなことは中々できることじゃないと思います。黒澤明や成瀬巳喜男にだって不可能でした。

「なんでもないことは流行にしたがう」、そして「豆腐屋には豆腐しか作れない」の強く徹底した意志が、今持って「古くならない」永遠の名作に昇華していると感じざるを得ませんね(^_^)

高峰秀子もピチピチとしていて可愛いし、大好きな作品です(*^o^*)