「彼らは生きていた」を2月1日に渋谷シアター・イメージフォーラムにて、「1917」は同22日に立川シネマシティにて。
双方とも百年ほど前、ヨーロッパ西部戦線をイギリス軍兵士の視点で描いた作品ですが、日本での公開は同じ時期となり、併せて観ることにより理解が深まって良かったなと感じています。
そして両作ともにイギリス出身で60年代生まれの同世代な映画監督であり、ハリウッドメジャーでも一線級の作品を生み出しているところも興味深い。
その上、それぞれ従軍した祖父の(直接あるいは間接的な)話しから着想を得ていて、深い感謝と哀切を込めているのも共通しています。
日本人からすれば、距離的にも時代的にも遠く、直接的な参戦もしていないので、馴染みの薄い戦争なため、自分も観てどうかな...と思いながらの鑑賞でしたが、飾り気のない臨場感の強い作風は、目と耳を一気に戦場に放り込み、劣悪な環境と、いつ襲いかかってくるか知れない銃弾の恐怖にさらされていきます。
手法として「彼らは生きていた」は当時撮影された記録フィルムをデジタルリマスターし、カラー化したもの。NHKのドキュメンタリー番組でも昔のフィルムをカラー化する試みは行われていますが、この作品は3Dモデルを応用して、映し出されているものを分離・再配置までしていて、立体的な奥行きを感じさせることまでしていて驚きました。パンフレットには「ステレオスコピック3D」のプロセスも記載されていたので、3D立体視可能なバージョンもあるみたいですが、現状は2D上映のみのようです。
音声も当時はサイレントなので、後付けなのですが、読唇術の専門家も使って、映っている兵士が何を喋っているのかを分析し、訛りも忠実に再現しているとのことで、物凄い手間暇が掛かっているのが実感できました。
もう一方の「1917」は映像に途切れのないワンカット撮影に主軸を置き、戦場の様子をケレン味無く、真摯に映像化したもの。
もちろん2時間ほどもある全編がワンカットで撮影されたワケではなく、所々で暗転させたり、手前に壁をかぶせたりして、繋いでいるのは見て取れるのですが、とても自然にやっていますし、抵抗感がない。
別の言い方をすればシーンの長回しを多用しているとも言えていて、舞台演劇の演出家出身もあって、ステージ上で生で演じる役者を観ているような緊張感が支配している感じでした。パンフレットに書かれていましたが、黒澤明監督作「天国と地獄」にも影響されたというのも頷けます。
サウンド面ですが、立川シネマシティでの極上爆音上映形式のため、強い低振動と銃撃や爆発音が耳だけでは無く、身体全体にぶつかってきて凄まじかった...特に前半のドイツ軍塹壕のトラップにかかり「あッ...」と思った刹那に爆発・暗転するシーンは、観ていて「死ぬ時ってこんな呆気なさなのかも...」と感じさせるインパクトがありました。
この2作を同時期に観ることができて本当に良かったなと思いました。
荒涼とした戦場に累々とした人馬の遺骸、塹壕の苛烈な環境...こんな状況に自分が置かれたら...想像するのも怖いとしか。
戦争は国家間の利権が激しく衝突する時に生じてしまう最悪の結果です。日本も第二次世界大戦において多くの犠牲を強いられた。
結果として、勝っても負けても戦争という出来事に勝者は存在しない...「彼らは生きていた」のラストは、国に帰還した兵士と、一般民衆の思いに大きなギャップがあり、やるせない感慨とともに幕を閉じます。
「1917」も冒頭シーンとラストシーンは同じように主人公が木の下に佇むも、ラストは心にポッカリと大きな穴があいてしまったかのような結びとしている。
ほんとうに...やるせないなとしか思えません...そんな事を100年前の人が静かにだが、強く訴えかけてくるような2作品でした。
双方とも百年ほど前、ヨーロッパ西部戦線をイギリス軍兵士の視点で描いた作品ですが、日本での公開は同じ時期となり、併せて観ることにより理解が深まって良かったなと感じています。
そして両作ともにイギリス出身で60年代生まれの同世代な映画監督であり、ハリウッドメジャーでも一線級の作品を生み出しているところも興味深い。
その上、それぞれ従軍した祖父の(直接あるいは間接的な)話しから着想を得ていて、深い感謝と哀切を込めているのも共通しています。
日本人からすれば、距離的にも時代的にも遠く、直接的な参戦もしていないので、馴染みの薄い戦争なため、自分も観てどうかな...と思いながらの鑑賞でしたが、飾り気のない臨場感の強い作風は、目と耳を一気に戦場に放り込み、劣悪な環境と、いつ襲いかかってくるか知れない銃弾の恐怖にさらされていきます。
手法として「彼らは生きていた」は当時撮影された記録フィルムをデジタルリマスターし、カラー化したもの。NHKのドキュメンタリー番組でも昔のフィルムをカラー化する試みは行われていますが、この作品は3Dモデルを応用して、映し出されているものを分離・再配置までしていて、立体的な奥行きを感じさせることまでしていて驚きました。パンフレットには「ステレオスコピック3D」のプロセスも記載されていたので、3D立体視可能なバージョンもあるみたいですが、現状は2D上映のみのようです。
音声も当時はサイレントなので、後付けなのですが、読唇術の専門家も使って、映っている兵士が何を喋っているのかを分析し、訛りも忠実に再現しているとのことで、物凄い手間暇が掛かっているのが実感できました。
もう一方の「1917」は映像に途切れのないワンカット撮影に主軸を置き、戦場の様子をケレン味無く、真摯に映像化したもの。
もちろん2時間ほどもある全編がワンカットで撮影されたワケではなく、所々で暗転させたり、手前に壁をかぶせたりして、繋いでいるのは見て取れるのですが、とても自然にやっていますし、抵抗感がない。
別の言い方をすればシーンの長回しを多用しているとも言えていて、舞台演劇の演出家出身もあって、ステージ上で生で演じる役者を観ているような緊張感が支配している感じでした。パンフレットに書かれていましたが、黒澤明監督作「天国と地獄」にも影響されたというのも頷けます。
サウンド面ですが、立川シネマシティでの極上爆音上映形式のため、強い低振動と銃撃や爆発音が耳だけでは無く、身体全体にぶつかってきて凄まじかった...特に前半のドイツ軍塹壕のトラップにかかり「あッ...」と思った刹那に爆発・暗転するシーンは、観ていて「死ぬ時ってこんな呆気なさなのかも...」と感じさせるインパクトがありました。
この2作を同時期に観ることができて本当に良かったなと思いました。
荒涼とした戦場に累々とした人馬の遺骸、塹壕の苛烈な環境...こんな状況に自分が置かれたら...想像するのも怖いとしか。
戦争は国家間の利権が激しく衝突する時に生じてしまう最悪の結果です。日本も第二次世界大戦において多くの犠牲を強いられた。
結果として、勝っても負けても戦争という出来事に勝者は存在しない...「彼らは生きていた」のラストは、国に帰還した兵士と、一般民衆の思いに大きなギャップがあり、やるせない感慨とともに幕を閉じます。
「1917」も冒頭シーンとラストシーンは同じように主人公が木の下に佇むも、ラストは心にポッカリと大きな穴があいてしまったかのような結びとしている。
ほんとうに...やるせないなとしか思えません...そんな事を100年前の人が静かにだが、強く訴えかけてくるような2作品でした。