ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

陰謀の代償 N.Y.コンフィデンシャル

2011-07-09 22:54:22 | あ行

邦題があってないで賞。

「陰謀の代償 N.Y.コンフィデンシャル」56点★★★


9.11後、2002年のニューヨーク。

警官のジョナサン(チャニング・テイタム)は、
幼い娘と妻(ケイティ・ホームズ)を愛する良識ある市民。

そんな彼は
クィーンズ警察署に配属される。

クィーンズは黒人失業者が多く、
治安が悪く、犯罪が絶えない地域。


しかし実はジョナサンは幼いころ
クィーンズの公営住宅で暮らしていた。

そして彼には妻も知らない
ある過去があった――。


アル・パチーノ、ジュリエット・ビノシュ、
レイ・リオッタと
いい役者が勢揃い。

クィーンズという地域の特性と
そこにある公営アパート群の異様な佇まいも
興味をひきつけます。


過去を背負った警官の話ではあるんですが、

同時に
街のごろつきは性懲りもなく犯罪を繰り返し
マスコミにはつつかれ、

いくら正義に奉仕しても実入り少なく、
命をかけてもそれに見合わない警官たちが
どう生き延びるのか、という話でもあり

昨年の番長ベスト10に入った
リチャード・ギアの「クロッシング」と
背景や状況がちょっと似ているんですよ。

で、
期待したんですが、

まず邦題がそぐわないなぁ。

陰謀、というには小さすぎ(組織犯罪っちゃあ組織だけど……)、
代償、というには「払った?」が微妙で
どうもスッキリしない。


原題「THE SON OF NO ONE」を
もっとうまく訳せばよかったんじゃないかなあ。
「その街の子ども」とかさ?
いや、ヘンか!難しいですけどねー。

構成も
過去の罪に囚われる主人公のフラッシュバックが
かなり執拗でねちこかったり。


ただ
背景が「9.11以降」というところに
この映画の意味がありますね。


あれだけの大きな転換点を経ても
実際に市井レベルの差別意識や
先の見えない社会状況は変わらない。

いや、
さらに悪化していたりするのに、

情報の開示やら、行政の透明化やら
正義の“定義”だけが表面的に
より良いかのように変化してしまった。

ゆえに
法的にはグレーでも
それでうまく収まっていた物事が
うまくいかなくなる。

そして起こってくる
「歪み」が
映画を通して感じられるのです。


しかしやはり
もっと「代償」を明確にしないとね、
スッキリしませんね。


★7/9から渋谷シネパトスで公開。ほか全国順次公開。

「陰謀の代償 N.Y.コンフィデンシャル」公式サイト
コメント
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