ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

コクリコ坂から

2011-07-10 21:16:09 | か行

ガキのころ、原作マンガを
近所のパーマ屋で読んだ記憶があります。

でも絵は憶えてるんだけど
話、全然憶えてないんだなあ。


「コクリコ坂から」76点★★★☆


1963年、ヨコハマ。

港の見える高台にある
コクリコ(ひなげし)荘の長女、
16歳の海(声・長澤まさみ)は

高校に通いながら
下宿を切り盛りしていた。

ある日、彼女は学校で
1つ先輩の俊(声・岡田准一)と出会う。

お互いに惹かれ始める二人だが、
思わぬ障害が二人を阻み――?!


「耳をすませば」1963年版、
学生闘争&メリケン波止場編(メリケン、は神戸だけどネ)という印象。

言ってみれば少女漫画的な
メロドラマネタなんですが、

日常の描写が丁寧で
かつ、かなりシンプルな作りなので
そうした展開にも、意外にすんなり溶け込めます。


背景となる街の
描き込みの端正さも見どころで、

洋館立ち並ぶ港町はハイカラ
商店街は『三丁目の夕日』ふう、と

ウマい具合に洋風と昭和をミックスしてるあたりが
さすがジブリ、という感じ。


物語の要となる
高校の建物は“カルチェラタン”
(教養ある学生が集う場所、という意味がある)と呼ばれていたりね。


1960年代のこの時代は
体験していないけど、でも懐かしい
「高校時代」「男女交際」「青春」というエッセンスを
時代を超えて
象徴するものなのかもしれません。


絵のクオリティも十分で
楽しめると思います。


ただ
ちょうど公開前ということで
「魔女の宅急便」のテレビ放送をしてたので
見ながら改めて思ったのは

「ここ数年のジブリ映画は
ここまで何度も繰り返し観ることが可能か?」ってことですね。


決定的な違いは
魅力的な脇役の不在、そして
物語に多層がないことでしょうか。


「コクリコ坂」も「魔女宅」でいえば、
トンボとキキの話だけが
ずっとされているような感じ。


おソノさんも、森の画家志望の少女(ウルスラ、という名前)も、
ニシンのパイを焼くおばあさんも出てこない。

同じ90分でも
多層なエピソードが奏でられると

主軸である「キキの成長」が
より大きいものになるし、

年齢によって見る角度が違ったり、
別のメッセージを感じとれたりもするわけで。

シンプルに絞る方法も、
もちろんあるんですけどね。

そう考えると最近のジブリ作品で
5回以上見てるのは
「ハウルの動く城」。
やっぱりマルクルとカルシファーの存在、大きいよなー。


★7/16から全国東宝系で公開。

「コクリコ坂から」公式サイト
コメント (4)
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