ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

希望のシグナル ―自殺防止最前線からの提言―

2012-06-16 14:49:18 | か行

テーマがテーマなのに
暗~くならないのがえらい。

映画「希望のシグナル ―自殺防止最前線からの提言―」70点★★★★


自殺者が全国一という秋田県。(知らなかった・・・)

ここでは“市井の人々”が、
自殺防止のためのさまざまな取り組みをしている。

その活動者やグループを
取材したドキュメンタリーです。


そうした活動をしているのが
身近な人を自殺で亡くしたり、自らも自殺を考えた人など
「痛みを知る人々」であるというのが、最大のポイント。

痛みを知る人が、痛みを持つ人を助ける。


そうした自発的な“人間の治癒力”が
自然に映っている映画です。

また若い監督が素直に取材しているんで、
見るほうもスッと素直に入っていけるんですねえ。


映画の中心となる住職にして
カフェの主人であり、自殺防止団体の会長である人物が
魅力的なことも成功の要因でしょう。

多くの人々を送ってきた彼は
行き場のない人々が集えるためのカフェを作り、
自らコーヒーを淹れ、話し相手になる。

会社を倒産させた男性は
自らの辛い経験を繰り返させまいと、中小企業の相談にのる。

ワシが一番グッときたのは
自殺者の遺族の会をまとめる女性。

息子を亡くした彼女は、その苦しみから立ち直るために
あらゆる会やカウンセラーを頼ったけどダメで

結局、一番救われたのが
「おなじ経験をした人」との出会いだったと言うんですね。
で、事務局を立ち上げたと。

自分の苦しみが、誰かの役に立つ。
それを知り、行動に移せる人間の底力ってすごいなあと思いますよ。


地域活性化をする若者グループや、
3.1後の状況も取材し、まとめかたも上手でした。


おなじみ『週刊朝日』「ツウの一見」で
元NHK報道ディレクターで
NPO法人自殺対策支援センター・ライフリンク代表の
清水康之さんにお話を伺って驚いたのですが、

いまや40人に1人が家族を自殺で亡す時代。
身の回りに自殺した人がいない人を
探す方が難しいでしょう、と。

確かにそうだ・・・。

「自殺」に対して自分が思っていたものも
この映画で少し、変わった気がします。


★6/15(土)からポレポレ東中野で公開。ほか全国順次公開予定。

「希望のシグナル ―自殺防止最前線からの提言―」公式サイト
コメント
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