ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

それでも、愛してる

2012-06-21 21:21:40 | さ行

ちょっと難しい作品でしたね~。


「それでも、愛してる」52点★★

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玩具会社の社長であるウォルター(メル・ギブソン)は
あるときうつ病になってしまう。

カウンセリングも薬も効かず
1日中寝ている夫を
妻(ジョディ・フォスター)はどうしようもできない。

そんなある日、
ウォルターはビーバーのパペット人形を拾う。

それを左手につけると、
なんとビーバーが人格を持ったように
しゃべり出したではないか!

ビーバーを操ることで
自分のホンネを話せるようになったウォルターは
明るく快活になっていく。

妻や幼い次男はよい兆しだと喜ぶのだが……。

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映画化されてない優秀な脚本=“ブラックリスト”に
2008年から入っていたものを
ジョディ・フォスターが監督&主演した本作。

しかしコレはですねえ
難しい題材なのに
さらに難しいことになっちゃってるんですよねえ。


近年、うつや精神病は映画の題材になることが多く、
観るひとの経験値も上がっている。

なのに
本作には病人のリアルさに
微妙なところがあるんですよねえ。

ビーバーのぬいぐるみを手につけて
ハイテンションになる主人公は
はたからみると
一人芝居にしか見えない奇異さで、

もはやうつ病というよりも
ほかの疾患では?と思えてしまう。(失笑)


医学的に正確かどうかは
映画にとって絶対問題ではないけど、

この場合はやはり気になるんですよねえ。

だってこの作品はファンタジーではなく、
キャストも演出も、雰囲気も
王道&マジメな家族ドラマなんだもん。

どうしてもリアリティを欠いた
印象だけが残ってしまう。

脚本そのものが難しいと思うので
よほどの魔法をかけないと
映画として成り立たなかったかなと思います。


それにいまや
うつだけじゃなく
病気をした人や、心に傷を負った人にとって

その経験から再生することが
イコール「100%もとの自分に戻る」ではないっていうのは
だいたいみんなわかってる気がするんですよ。


あくまでも
「その経験をした人」として、
ときに得がたいものを得て、
次のステップに行くものだと。

それを言いたかったとすると
ひどくまどろっこしかった。

ただ、
ラスト、高校生の長男の卒業の言葉が
いい言葉でちょっと響きました。


★6/23(土)からシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「それでも、愛してる」公式サイト
コメント
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