ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

エリジウム

2013-09-15 18:45:21 | あ行

「第9地区」監督の新作です。


「エリジウム」69点★★★☆


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21世紀末。
地球は環境汚染と人口増加でダメになっている。

一部の富裕層は美しいスペースコロニー“エリジウム”に移り住み
地球に残された人々は
汚染と貧困のなかで暮らしていた。

そして2154年。

ロサンゼルスの貧困街に暮らすマックス(マット・デイモン)は、
工場で誤って大量の放射線を浴びてしまう。

余命5日、とされた彼は
病気の治せる機械のある
“エリジウム”に潜入する計画を立てるが――。

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「第9地区」ニール・ブロムカンプ監督が
マット・デイモン主演で描くSFアクション作品。


格差社会の底辺で生きる主人公が
富裕層の代表(ジョディ・フォスター)とそのシステムに戦いを挑む――?!という
胸のすくSFアクションかなあと想像し、

さらに「第9地区」後だけに
もっと皮肉やペーソスがあるかと思ったんですが

これが意外にもストレートな
「貧富の差」「悪」の描きかたで、ちょっと拍子抜け。


薄汚れて雑多な地球のリアルや
主人公が怪我だらけだったり、ましてや死にかけてたりとか
ややグロいスプラッタ描写が多少あったりと

ありきたりでないところはあるけれど、
脚本には雑すぎる面も多し。
特に病気をなんでも治せる機械って
あんまりリアリティないよねえ・・・

(「スタトレ」最新版に出てきたのは
あれは病気を監視するシステムだっけか・・・。
ウィル・スミス親子の「アフター・アース」にも
“ここの動脈が切れてます”とか手術の方法を教えてくれるメカがあったな・・・)


脳に直結させるアームスーツとか“ありもの”っぽいし、
偵察機械はルンバみたいだし(笑)

監督は子どものころ
「日本のTVアニメを食い入るように見ていた」そうで
「スペースコロニーの発想に、ガンダム入ってるのでは?」とする
資料の論旨もなんとなくわかる。

いろいろ考えて、
回り回って、普通のSFになったのかな。

ただ、このところニュースを見ていてすごく思うのが
「エリジウムの世界は、現実になるかもしれない」ということ。

地上の汚染は止まらず、富裕と貧富の格差は止まらず、
月を見上げるように、
憧れの場所“エリジウム”のある世界ができるのかもしれない・・・とリアルに感じました。

監督は南アフリカ・ヨハネスブルグ出身で
故郷での差別やスラムの経験が
「第9地区」でも、本作でも大きく影響しているそうですが

もう、その状態が世界規模になりつつあると
マジで感じますからね。

そういう意味では、本作の世界観は
リアルに印象に残るものでした。


★9/20(金)から全国で公開。

「エリジウム」公式サイト
コメント (2)
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