ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

かぐや姫の物語

2013-11-17 13:33:38 | か行

監督が55年間、考え続けていたものを
見る。

そのことの、重み。


「かぐや姫の物語」72点★★★★


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いまは昔、竹取の翁(声・地井武男)は山のなかで
光る竹を見つける。

そこからなんと
愛らしい赤ん坊が生まれ出てきた。

翁は媼(おうな)(声・宮本信子)と
その子を育てることにする。

赤ん坊はみるみる大きくなり
美しい娘に成長するが――。

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「今は昔、竹取の翁といふ者ありけり」で始まる、
日本最古の物語『竹取物語』を

高畑勲監督が描いたアニメーション。

55年前から構想し、製作期間8年!という
とてつもない時間をかけて、作られた作品です。

「そういえば、かぐや姫ってこういう話だったな」と、うなずくほど
筋はそのまま踏襲されていました。


なにより
スケッチのような線画の動きが見事!
(まあ“おせんべいの包装紙”のようでもあり、好みはわかれそうだけど。笑)

赤ん坊の愛らしい仕草や動きの表現、
野の花々で、季節の変化を知らせる様子など、

この映画の一番のテーマであろう
「日々の“生”を噛みしめること」
絵と動きというアニメーションの特性そのもので表現しているわけです。


ただ「姫の犯した罪と罰」という
強烈な宣伝コピーは、ちょっと罪(笑)。

これに引っ張られすぎると「?」となると思う。




ここからはネタバレあるので、ご注意。


かぐや姫が「月で罪を犯して、地球におろされた」ことは
元ネタの『竹取物語』にも書かれているけど
しかし何をやったかは書かれていない。

「いったい、何をやらかしたんだ?」と思うじゃないですか。

で、このコピーから映画には
その答えを期待するじゃないですか。

しかーし、
結局、明確にされずじまいなんですわな。

てか、ワシ何か見逃した?(笑)ってくらい。
これにはかなりびっくりしたし、ガックリした(苦笑)

「惑星のひとつくらい消滅させたか?」とか
あれこれ想像しましたからね!(笑)

でも、そのあと
「罪っていったい、なんだったんだろう?」と、めちゃくちゃ考えさせられた。

それこそが、この55年に及ぶ高畑監督の
思考の旅の意味と、答えなのだと思うんですね。


考えるに。

まず
(1)月の世界は真っ白で、苦しみや悲しみもないけれど
   喜びも欲望もない、無味乾燥な世界であること。

(2)かぐや姫は美しい緑の地球を見下ろして、そこに行きたいと願った。これもひとつの罪かな。   

(3)で、月での記憶をなくして地球でのびのびと育つ。

(4)成長し、自分が“女”として見られていると理解したときに暴走することから
   月での罪とは、やはり此の手の“禁忌”を示唆している気もする。

(5)で、その後に求婚相手を振りまくり、相手を不幸にしてしまう。また罪を重ねてますわな。

(6)月に帰らねばならなくなったとき、
   なぜ地球に来たかったのかを思い出して
   せっかくの色鮮やかで、生きる喜びに満ちた世界を享受しきれなかったことを悔やむ。

(7)その思いを遺して、月に帰らなければならなかったこと。これが罰か。


ってとこでしょうか。

そして(6)は、
いま地球に生きている我々自身に向けて、言っているのでしょう。

生き生きと弾けるような“生”を
とてつもなく手間をかけたアニメーションで表したからこそ、
(6)に到達できるわけで。

と、つらつら考えてみましたが、どうでしょう。
みなさんも考えてみてください。

★11/23(土)から全国で公開。

「かぐや姫の物語」公式サイト
コメント (2)
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