予想どおりのあったかホームドラマだけど、
予想以上に笑えて、ジンと胸をつかれました。
「おじいちゃんの里帰り」76点★★★★
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1960年代半ば、
ドイツは労働力として
トルコから多くの移民を迎え入れた。
イズマル家の“おじいちゃん”(ヴェダット・エリンチン)も
当時ドイツに移住したトルコ人。
家族もドイツに呼び寄せ、
いまや三世代がすっかりドイツでの暮らしに溶け込んでいる。
が、
6歳の孫チェンク(ラファエル・コスーリス)は
小学校で「自分はドイツ人なのかトルコ人なのか?」と
考えこんだりもする。
そんななか
おじいちゃんがいきなり
「トルコに家を買った」と言い出して――?!
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ドイツに多くいるトルコ系移民の
ルーツと、いまを背景に
見事な家族ドラマに仕立てたなかなかの作品。
子役使いのうまさ
家族の個性の丁寧な描写、
そして
過去の話と現在の話を巧みにつなげる構成・・・など
セオリーをきちんと踏まえた
“確かさ”もよいんだけど
見事なのが笑いのセンス。
異文化ギャップや異世代交流を、
抜群のタイミングで「プッ」とさせるんですなあ。
宗教や民族の話を基盤に置きつつも
トゲトゲしさとは無縁で、
「ああ、見てよかったな」とつくづく思えます。
監督と脚本は
実際にドイツのトルコ系移民である
ヤセミン&ネスリン・サムデレリ姉妹。
自身らが体験したこと、
自分たちの家族の話でもあるわけだから
こんなにも
リアリティがあって、生き生きしてるんですね。
“トルコ”という土地に根ざした人の生き様というか
民族的な“どっしり度”みたいなものを感じたし、
それが、どこか
死に対する感覚にも共通しているんだな、というのが
興味深かった。
悲しみだけでなく
“つながってる”“そこにいる”感じがあるっていうんだろうか。
なんかいいな、と思いました。
そしてワシにとって嬉しかったのは
おなじみ『週刊朝日』(11/29号)の「ツウの一見」で
『トルコで私も考えた』シリーズの高橋由佳利さんに
お話を伺える機会をもらえたこと!(笑)
高橋さんならではの
“トルコのおじいちゃん”の見方、そして
“異国で生きていくこと”についてのお話も
すっごく参考になりました。
そうそう
宣伝ポスターにワシの推薦コメントが
載ってるかもしれませんぜ(笑)
★11/30(土)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。
「おじいちゃんの里帰り」公式サイト