ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

クリーピー 偽りの隣人

2016-06-14 23:19:23 | か行

まさにクリーピー(=気味の悪い)なミステリー。
でも、そのイヤさ加減に引き込まれます。


「クリーピー 偽りの隣人」71点★★★★


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元刑事の高倉(西島秀俊)は
1年前、ある事件をきっかけに退職し、
いまは
大学で犯罪心理学の教授を務めている。

最近、妻・康子(竹内結子)と愛犬マックスとともに
新居に引っ越し
新たな人生をスタートしていた。

だが、高倉はあるきっかけから
6年前の未解決事件に興味を持つ。

そのころ、康子は引っ越しの挨拶まわりで
ちょっと変わった隣人(香川照之)に出会っていた――。


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黒沢清監督作品。

「あの人、お父さんじゃありません。全然知らない人です」――

引っ越し先の隣人の娘に
そんなこと言われたら、どうでしょう。

めちゃくちゃ魅力的な
キャッチコピーじゃありませんか。


この映画のおもしろさは
まずそんな
「隣人付き合い」「トラブル」という日常性。

どう転がるか読めない展開。
(いや、実際「そんなずさんなこと、あるか?」な部分もあるんですが、
勢い飲み込まれちゃうし、引き込まれちゃうんです(笑)


なにより
西島秀俊氏演じる元刑事の犯罪心理学者が
一見、カッコいいようでいて
凡庸――いやハッキリ言って
「アンタ、下手を打ってばかりなんすけど!」というキャラクターなのが
おもしろいんですよ。

そんな主人公を
西島氏が、自身の個性を役の下に上手に塗り込めて
演じていると感じました。

妻役の竹内結子氏も、一瞬、
「ん?この人、誰だっけ?女子アナだっけ?」くらいに
自身の“光”を抑えていて、うまい。


隣人となる香川照之氏の気持ち悪さも、
過激でなく、日常に埋没する絶妙なラインだったなあ。

それに、いつも思うけど
「家」そのものを“薄気味悪く”効果的に描くのは
さすが
「スウィートホーム」(88年)の監督だなあと。
いまでも一番怖い映画なんですよねえ。


★6/18(土)から全国で公開。

「クリーピー 偽りの隣人」公式サイト
コメント
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