ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~

2012-11-07 23:41:05 | た行

けっこう賛否・・・というか
単純に好き嫌いが真っ二つになっているようです。

「チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~」57点★★★


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音楽家のナセル・アリ(マチュー・アマルリック)は
死ぬことにした。

大切なバイオリンを壊され、
替わりの楽器が見つからないからだ。

そして彼は死ぬまでの8日の間、
自分の人生を振り返る。

そこには、決して戻らない
ある恋の思い出があった・・・。

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自伝的コミック「ペルセポリス」を
見事なアニメーション映画にして
世界を驚かせたイラン出身のアーティスト、マルジャン・サトラピ。

彼女が自分のコミックを
今度はマチュー・アマルリックを迎えて作った
初の実写映画です。

クセ者役者に、クセ者な監督。
幻想的なムードは悪くないし、
とぼけた笑いや、シニカルさもある。

なんだけど、とにかく後半まで話の手がかりが少なすぎて
繋がった物語としての面白味にかけるんですねえ。


ただ
視覚表現には優れた部分が多くて印象的だった。
「ため息をつかまえる」「魂が煙となる」シーンなんて、すごくいい。

8日間のうち、ラストは怒涛の展開で
きちんとまとめはしてるんだけど

うーん、やっぱりこの盛り上がりをバランスよく
全体に配分してほしかったなあと。

ただ
この映画、音楽家や作家さんなど、
アーティストにはめちゃくちゃウケがいいそうです。

現在発売中の「週刊朝日」(11/16号)おなじみ「ツウの一見」でも
山崎ナオコーラさんが、本作のよさを語ってくださって、
お話聞きながら
「そういう見方があるのか・・・」とハッとしました。

見る人を選ぶ映画が、あったっていいんですわね。


★11/10(土)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかで公開。

「チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~」公式サイト
コメント (2)
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映画と恋とウディ・アレン

2012-11-06 23:23:46 | あ行

ウディ・アレンの全貌がわかる
初のドキュメンタリーです。


「映画と恋とウディ・アレン」75点★★★★


ウディ・アレンが初めてカメラ撮影を許可したという
中身の濃いドキュメンタリー。

エミー賞受賞歴もあるといいますが
52歳の監督に
なぜウディ御大がOKを出したのかが
一番知りたい感じですが(笑)

タイミングもよかったんでしょうね。


本人のほか、関係者のインタビューや映像で

赤ん坊時代の写真から、5歳で人生にひねくれたこと
高校時代に新聞にジョークを投稿して、両親より稼いでいた……なんて
「へえ~」なネタを豊富に盛り込み、
本当におもしろい。


自分の脚本を人にいじられるのがイヤだから
監督をやっているという姿勢に「うんうん」。

「早く家に帰りたいんだ」と
ササササッと撮る姿勢にも「うんうん」。

観客が飽きずに見る時間を考えてる・・・にも
「うんうん」。

と、
もう、すべて納得しまくり&にやけまくりです(笑)

俳優の良さを引き出すマル秘テクなんかも
「へええ」だし、

溢れるアイデアを書き留めるのが
重厚なデスクに万年筆とかでなく

ホテルのベッドに寝そべって
レポート用紙に青ボールペン・・・
とかいうのがなんかツボりました(笑)


なによりもアレン一族は
長寿の家系らしいのが、ことのほか嬉しい!

来月12/1には
「恋のロンドン狂騒曲」も公開されるし
(これもおもしろい!)

76歳、まだまだイケます!



★11/10(土)からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。

「映画と恋とウディ・アレン」公式サイト
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シルク・ドゥ・ソレイユ 3D 彼方からの物語

2012-11-05 15:06:57 | さ行

初体験だったので
「ほぉ~」と。

「シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語」67点★★★☆


名前とウワサは聞いたことがある
超絶パフォーマンス集団の演技を3Dでみる映画。


「ナルニア国」のアンドリュー・アダムソンが監督、
「アバター」のジェームズ・キャメロンがプロデューサー。

ドキュメンタリーではなく、
映画用のオリジナルストーリー仕立てで、

セリフはなく

普通のサーカスにやってきた女性が、
“不思議な世界”に入り込んでいく、という話。


空中ブランコ、シンクロナイズド・スイミング、中国雑技団のような
アクロバティックな演技がガンガンに盛り込まれ
「スゲエ!」の一言。

しかも
ただの“曲芸”ではなく、
それらを「最も効果的に魅せる方法」
知力が絞られているのが、この集団の魅力ですねえ。


水や火、砂、布を使った
ダイナミックな舞台美術が美しいし

例えば空中ブランコで「落ちてはいけない」禁断ルールを
あえてくつがえすような演出に息を呑みました。

パフォーマーにはそれぞれ得意分野&役割分担があるそうで

映画宣伝の方によると
例えば新体操とか、シンクロとかのオリンピックレベルの選手などを
スカウトしに行くそうなんですよ。
スゴイねえ。

ただ、技っていうのは
やっぱり「おお!」という最初の刺激が最大で

ちょっとシークエンスが長くなると
次第に麻痺していき
だんだん退屈になってしまったのも事実(苦笑)

ホント言うと
舞台裏を写すドキュメンタリーで観たかったかなという気もする。


それでも
次から次へと多彩な技が出てくるので
感心いたしました。


特に球体の水槽のなかを泳ぐ女性が美しかった!
子供のころ、水中バレエを見て
物凄い衝撃を受けたことを鮮烈に思い出しました。

「バレエがやりたいやりたい」と泣きわめいたなア。
やれなかったけど(笑)

と、いうことで
ぜひ、お子さんにおすすめです。


★11/9(金)から全国で公開。

「シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語」公式サイト
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みんなで一緒に暮らしたら

2012-11-04 00:44:06 | ま行

タイトルだけで観たくなっちゃうんですが。


「みんなで一緒に暮らしたら」61点★★★


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パリ郊外に暮らす
アルベール(ピエール・リシャール)と
ジャンヌ(ジェーン・フォンダ)夫婦

ジャン(ギイ・ブドス)と
アニー(ジェラルディン・チャップリン)夫婦

そして独身のクロード(クロード・リッシュ)。


平均年齢75歳の5人は、40年来の親友どおしだ。

毎日のようにアニー夫婦の家に集まり、
ワインと食事を楽しんでいるが
さすがに歳もあり、みな何かと不自由も感じていた。

ジャンは「みんなで一緒に住めばいい」と言うが、
妻からも「共同生活なんてイヤ」と一蹴される。

そんなある日、
クロードが心臓発作で病院に担ぎ込まれて――?!

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昔からの友人でご近所仲間の男女5人が、共同生活をする話。

こういうテーマは大好きだし
しかもフランス映画(ドイツ合作)だし・・・ということで
期待が高すぎたかも。


もっとほんわか笑えるドラマかと思ったけど、
ちょっと哀切すぎた。

なんつうか
人生の秋を通り越して晩秋のムードというのかしらん。

初期の認知症が見られるダンナ、
ダンナに内緒で実は重病な妻など、

ほぼ80歳がらみの彼らのあぶなっかしさは、
その発言や行動ではなく
リアルに体調の問題なんですよねえ。

認知症のボケかたはリアルだけど
重病なジェーン・フォンダは元気すぎたりと
(まあスタイルがよくてビックリしましたが

シビアさとファニーのバランスも、
どこかちぐはぐで。

1970年生まれのスティファン・ロブラン監督は
5年かけて、本作を完成させたそうですが
この年代を描くには
ちょっと、まだ早かったのかもしれないですね。

なにより
画面の平均年齢が高すぎて、
若い青年が登場して
かなりホッとした自分に笑いましたよ(笑)


★11/3(土・祝)からシネスイッチ銀座で公開。ほか全国順次公開。

「みんなで一緒に暮らしたら」公式サイト
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JAPAN IN A DAY(ジャパン イン ア デイ)

2012-11-03 13:58:10 | さ行

2011年に
リドリー&トニー・スコット兄弟が製作した、
「LIFE IN A DAY」の日本バージョンです。

「JAPAN IN A DAY(ジャパン イン ア デイ)」53点★★☆


世界中の人から、ある一日の一コマを送ってもらい
それをつなぎ合わせて1本の映画にする
“ソーシャル・ネットワーク・ムービー”という手法を編み出した
前作「LIFE~」。

その手法を「いいね!」と思ったフジテレビが
リドリー・スコット監督に
「続編を作りませんか」と持ちかけて実現したのが本作。


世界12ヵ国、8000本の
「2012年3月11日の日常の一コマ」をつないで映画にしたものです。

まあ言わずもがな3.11がテーマで

舞台はほぼ全て日本。
内容も被災者の体験談や、原発反対デモなどが多い。

確かに被災者の生の声に
ズキンとする場面もあります。

このスタイルの映画だからこそ、の意味はそこにあるのでしょう。


ただ、やっぱりアイデアとコンセプトをいただいた
二番煎じではあるわけで、

前作のような新鮮さはない。

それに前作は
「世界中に同じ太陽が昇ってるんだ」という
あったり前なんだけど、意識してなかった事実を改めて感じさせたところが
おもしろかったんですよねえ。


単純に国による生活習慣の違いとかね。

結局「ソーシャル・ネットワーク・ムービー」って、
限定地域や物事に範囲が狭まっていけば、

町内会や同窓会ムービーに
果ては「ホーム・ムービー」に戻ってしまうということがわかったというか(笑)
本末転倒?という(笑)

特に今回は、同じ人や家族や家が何度も出てくるので
人の家の匂いや
こたつのなかの匂いすら匂ってくるようなホーム感が(苦笑)

子どもばっかり出てくるのも
なんだかなあという感じ。

もうちょっとひねってくださいで賞。


★11/3(土・祝)から全国で公開。

「JAPAN IN A DAY(ジャパン イン ア デイ)」公式サイト
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