誰にでも忘れられない思い出がある。
僕はもの心ついた時から、洋楽を聴いてきました。若い時に買ったLPレコードは、何度も何度も繰り返して聴きました。レコード1枚のお金がなかなか貯まらなかった時代。レンタル店もなく、レコードを貸し借りする友人も、まだいなかった時代でした。だから、CDを大人買いできるようになった時代に聴いた音楽と、若い時に聴いた音楽の愛着度は、全く比較になりません。
学生だった頃は、お金が無いから欲しいレコードは買えなかった。音楽を聴くと、レコードを買うが、同義語だったのです。聴きたいレコードは数少ない洋楽好き(周囲の友達は歌謡曲を聴いていた)の友人から借りたり、エアチェックして我慢しました。それでも全部をカバーできない。残りはレコード店でジャケットを見て、どんな曲かを想像して終わり。心残りの多い学生時代でした。
時代は流れ、レンタルCDの登場と共に、FM雑誌が廃刊となりました。同時にFM放送も中身が全く違うものになってしまいました。レンタルビデオの登場と共に、映像、つまり自宅で映画を観ることが主流となりましたが、働き盛りの30年間は仕事に打ち込み、オーディオもDVDも部屋から消え去りました。自分の部屋という存在も失いました。
今、人生の後半生に思いを馳せる時、思い出すのはこれまでに愛した音楽です。映画のように画面で目が疲れることもなく、重低音に胸を打たれるプレッシャーも感じない。自分の気持ちに心地よく響く音楽を選び、僕に英語を教えてくれた音楽の歌詞にも、今一度じっくりと目を通す。そんな時間を少しだけ持てるようになりました。昔は100万円以上するマランツのアンプや、いい装置を持っていたこともありました。ブックシェル・スピーカーの普通のコンポの時も。今でこそやっと、そこそこのシステムを持てて満足しています。
1977年、アメリカで「スター・ウォーズ」という映画が公開され、爆発的な観客動員を誇っていると聞き、早く見たいと思いました。しかし、映画配給会社が情報操作をしていたのか、なかなか映画の情報が入って来ません。そんなある日、FM放送の映画音楽特集の番組で、スター・ウォーズのテーマが流されるという情報をFM-fanで知って待ち構えました。
作曲者はジョン・ウィリアムス。大好きなジョン・ウェインの「11人のカウボーイ」の作曲者と同じ?と思っていると(正解でした)「ジョーズ」のジョン・ウィリアムスだとアナウンサーが解説。SF映画の音楽だから、流行のシンセサイザーを駆使した音楽だろうと思っていたら、あの出だしでガツーン!と頭を一撃されました。まるでクラシックのような音楽の美しさ。「酒場のバンド」のテーマはジャズ。一体どんな映画なんだと期待が膨らんで仕方がない音楽でした。
年末の発売日にレコード屋(豊中駅前新開地デパート2階の交声堂)へ行き購入しました。2枚組LPのお値段は中学生にとっては破格の¥3,600で、工面するのはとても大変なことでした。レコード中央は20世紀フォックスのレーベル。マニア心を擽り、付録の大きなポスターで映画への夢が膨らみました。アメリカ製のポスターが、それまでに見たことが無いような迫力で、「宇宙戦艦ヤマト」を見慣れた目に迫って来たのです。
大阪梅田の阪急プラザでアメリカに遅れること1年。1978年に映画を観た時は、その時に劇場に足を運んだ方は、忘れようにも忘れられないショックを受けられたと思います。もう度胆を抜かれました。黄色いテロップが雄大なテーマ曲に乗って映し出され、静かな宇宙空間になったと思ったら、共和国の宇宙船がスクリーン右上から現れ、その後を追って出てきた帝国軍の戦艦が凄かった!あの描写には固唾を飲みました。どこにもピアノ線らしきものも見えませんでした。映画が終わっても席を立つ人が少なく、ほとんどの人が2度観たと思います。(当時は入れ替え制ではありませんでした)
ついつい熱く私に思い出を語らせてくれるスター・ウォーズのサントラ!ロンドン交響楽団の演奏は、今も新鮮であり、古いものほど新しいということを知らせてくれます。現在公開されたシリーズ9作+2作品。あなたは誰といつ、どこでご覧になりましたか?