活字離れ・洋画離れが進む中、「風と共に去りぬ」を知らない人が多くなっても、仕方がないかも知れません。原書、訳本は勿論、映画でも見たことがないという人は、英文学や英語を学ぶ大学生にもたくさんいます。「ポール・マッカートニー?誰それ?」という若者がいても、21世紀においてはもはや当たり前。娯楽は本から映画、映画からテレビと移りかわり、今では娯楽のキングと言えば、携帯でのゲームなのかも知れません。
マーガレット・ミッチェルの「風と共に去りぬ」(Gone with the Wind)は、1936年6月30日に出版されました。
“I’ll think of it all tomorrow at Tara…. After all, tomorrow is another day.”
これは、この作品の最後の1行なのですが、作者であるミッチェルはこの1行を最初に書いてから、この作品を書き始めたのだと言います。意外と知らない方が多いようなのですが、「明日は明日の風が吹く・・・」という有名な訳は、実は翻訳本では使われていません。映画の字幕で採用され、一般にこの訳が最も有名な訳になったようです。「風と共に去りぬ」という邦題と共に、「風」という言葉を使っているのは実に見事です。
風と共に去りぬと言えば、このセリフが名セリフとして有名なことは、皆さんもご存知だと思いますが、AFIが選ぶ「アメリカ映画・名セリフ100」の第1位に選ばれたセリフは、風と共に去りぬからのセリフなのですが、実は上のセリフではありません。それは次のセリフなのです!
“Frankly, my dear, I don’t give a damn.”
ずっと主人公スカーレットを愛し続けて来たのに、彼女から愛されない夫バトラー。彼が遂にスカーレットに愛想を尽かせた、物語の最後の最後になって初めて、スカーレットはバトラーを愛していることに気が付きます。そして彼に初めて愛していることを告げるのですが、もう夫婦関係に疲れ切った彼は、スカーレットを拒否します。「あなたがいなくなったら、私はどうすればいいの?」という彼女の問いに対して、彼が言い放ったのがこのセリフなのです。
「率直に言って、俺には関係ないね。」という意味ですが、dear と damnの雰囲気から、冷たくも紳士的な気持ちが迫ってくるようなセリフです。
原作通りの台詞なのですが、実はこの“damn”という言葉は、映画化された1939年当時は、製作コードにひっかかる言葉でした。そこで“I don’t care.”に変えようかという議論がされたのですが、プロデューサーのデビッド・セルズニックはこの言葉にこだわり、敢えて5,000ドルの罰金を払ってまで、このセリフを使いました。そして、そのセリフが、映画史上に残る名セリフとなったのです。
ちなみにこのセリフ、原作者のミッチェルが最初の夫と別れる時、夫から言われた言葉です。(彼女は2回結婚しています)