「思い出の味、捜します。」
料理雑誌の片隅に載ったこんな1行広告を頼りに、思い出の味を探して欲しいと依頼者がやって来る。
どれもこれも、おぼろげな記憶による雲をつかむような味ばかりだ。
店主の鴨川流(ながれ)と娘の「こいし」は概ね、2週間ほどの間にそれを探し出し、調理して依頼者に食べさせる。隠された思い出話とともに。
「STORY BOX」誌に連載された短編6編を収めたNHK BSの人気ドラマの原作本。
毎回、良質の人情噺とともに提供される「京都おばんざい」。画面ではチラとしか映らず、しかも店主の説明がサラッとしているからよくわからず悔しい思いをしたが、小説では、例えば次のように記述される。
「左の上から、明石の鯛を細造りにして木の芽と和えてます。ポン酢で召し上がってください。賀茂ナスの田楽はひと口にしときました。舞鶴の烏貝はミョウガに挟んでます。甘酢で〆たコハダを小袖の棒寿司にしました。早松茸のフライ、鰻の源平焼き、万願寺唐辛子の天ぷら、鮑は西京味噌に漬け込んで焼きました。魚そうめん、地鶏の鞍馬煮、鯖の燻製に松の実を挟んでます。生湯葉の柴漬け和え。どれもひと口サイズなんで、女性向きやと思います。穴子飯が炊き上がつたらお持ちします。ゆっくり召し上がってください。」
これならどんな料理かそれなりにわかる。
これが映像と文字情報の違いなのだが、さあどちらに軍配を上げようか。(お勧め度:★★★)
よろしかったら、「~おかわり」をどうぞ。(写真は、NHK ONLINE から借用しました)