アーバンライフの愉しみ

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藤沢周平著「全集第6巻:又蔵の火・他」

2018年03月01日 | 読書三昧

先に、遠藤展子(周平氏長女)著「藤沢周平:遺された手帳」で、周平氏が、直木賞受賞作の「暗殺の年輪」より当時執筆中の「又蔵の火」の方が出来が良いと考えていたとの紹介があった。

ただ、「又蔵の火」は過去に読んだはずだが印象が薄く筋さえ覚えていないので、今回掲題の全集で再読してみた。

物語~又蔵は、放蕩のかぎりを尽くして座敷牢に押し込めらた兄の万次郎を伴って故郷の庄内藩を脱藩して江戸へ向ったが、路銀不足から兄は一人故郷へ戻ろうとし(妹婿と従妹に捕まり)惨殺される。又蔵は仇を討つべく故郷へ乗り込むのだが・・・。

この物語は実話が元になっている由にて、確かによく書けているとは思ったが、話の土台となっている人生の機微からすれば、小生はやはり「暗殺の年輪」に分があるように思った。

つまり、乳飲み子を抱えた寡婦が生き延びるために、夫を自裁に追い込んだ家老に身を任せざるをえなかった哀しみを描いた「暗殺・・」の方が受賞作にふさわしい。

他に、本能寺の変に至る明智光秀の内面に迫った「逆軍の旗」や、米沢藩の再生に奔走する家老を描いた「幻にあらず」など、同氏の初期の作品は力があり読み応え十分であった。

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