すかたん | |
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講談社 |
著者の作品が私の時代小説への入り口でした。デビューから三作目の本作はいよいよ大坂が舞台に。関西在住、上方落語にも造詣の深い著者の大坂時代小説を待っていました!
侍だった夫を亡くした若妻・知理(ちさと)は、縁のない大坂で一人で生きています。成り行きで奉公に上がった天満の青物問屋は独特の世界。しきたりのなかで苦労しながらも旦那、お家さん、若旦那の微妙な関係を眺め、知らず知らずのうちに青物の世界にどっぷりと浸かっていくのです。
人間模様を描きながらも当時の風俗や大坂社会の仕組みなどを取り入れながら物語は進んでいきます。まさに古典落語な世界の言葉の数々にも世界を広げる力がありました。江戸出身の主人公の驚きは現在の私たちの驚きともつながり、スムーズに風俗が紹介されています。
本好きな人はもちろん落語好きな人にも読んでいただきたい一冊です。