![]() | 謝るなら、いつでもおいで |
クリエーター情報なし | |
集英社 |
内容(「BOOK」データベースより)
友だちを殺めたのは、11歳の少女。被害者の父親は、新聞社の支局長。僕は、駆け出し記者だった―。世間を震撼させた「佐世保小6同級生殺害事件」から10年。―新聞には書けなかった実話。第十一回開高健ノンフィクション賞最終候補作を大幅に加筆修正。
2014年3月に出版されたノンフィクション。
「少年事件は楽に数字を取れる」が招いたことこの記事をきっかけに読みました。
著者は被害者家族と近しい場所にいたために単なるドキュメンタリー以上にその被害者、加害者家族の内面に踏み込んでいるように感じました。
ですので、突然娘を亡くした父親の動揺、部下の視点に非常にリアリティがあり、胸が締め付けられる思いでした。
非常に丁寧に描かれていくのは事件の概要だけでなく、その後の家族たちです。
第二部は被害者の父親、加害者の父親、被害者のすぐ上だった兄を追います。
国が親の代わりとなり道を誤った子たちたちを導かなくてはならない国親思想。少年法のよりどころとなる「可塑性」。
普段聞きなれない言葉ですが、法律に基づく思想の懐の深さを知りました。子どもたちはまだまだ変容の途上とあるため大人と同じ法律で裁かれるべきではない、また、国が親となるということ。
犯罪を犯してからそれらに関わるのではなく、その手前で迷う彼らの救いへの道がもっと存在しており、それが確かなものとして認知されるべきではないのでしょうか。
タイトルは成人したお兄ちゃんの言葉です。字も。
被害者と歳が近く仲がよかったお兄ちゃんはその悲しみを抱え、誰にも吐き出すことができなかったそうです。
加害者の少女とも仲の良かったお兄ちゃんは「どう反応していいのか困りました」と言います。彼は妹と彼女との間のトラブルを知っていたし、またそこまでの問題になるとも思っていなかったのです。
非常にセンセーショナルな内容です。立ち止まれるところがあったのか分からないのです。どこで犯罪を止められたのか。
なぜ?の答えは見つかりません。
でも、お兄ちゃんの語る話に未来があるのです。
「謝るなら、いつでもおいで」
※加害者の弁護士の方が無償で経済的に困難な加害者家族を無償で支え、また被害者側の弁護士とも連帯し、両家族のケアにあたったそうです。犯罪は裁くだけで終わらず、このように周辺で支える方々により「その後」が変化していくということが感慨深いです。