会社の管理職・OB向けの講演会が時々行われているが、会場が家から自転車で5-6分のところにあり、しかも無料なので、よく出掛ける。1月22日は、元NHKヨーロッパ総局長でもあった磯村尚徳氏の講演会で、演題は「日本人が考えるほどヨーロッパはヤバではない」であった。久し振りにお顔を拝見したが、とても90歳とは見えないほどお元気で、お話しぶりも全く年を感じさせない印象であった。
イギリスのEU離脱問題で揺れているヨーロッパであるが、講演の主なポイントは下記のようなものであった。
・イギリスは、かっての大英帝国のほどの影響力はもうない。
・今のヨーロッパを引っ張ているのは、3人の女性
①ドイツのフォンデアライエン女史(初のEUの女性欧州委員長)
②フランスのラガルド欧州中央銀行総裁
③デンマークのベステアー欧州委員(GAFAの天敵)
ドイツとフランスが引っ張るEUは極めて強力であるという。
・ドイツの強みは、
①国歌にもなっている「世界に冠たるドイツ」は健在で、財政黒字
②ドイツの製造業(モノづくり)は卓越
③人の養成が上手(難民も多数受入れ、熟練工育成)
④政治家が優秀(大連立、大人の政治)
⑤1963年の仏独協力条約(ドゴールとアデナウアー間)-- 800万人の若者の交流・共通の歴史教科書作成等や1969年エアバスの開発 ⇒ EUの土台
⑥生活の質が高い(休暇もしっかり取る、皆5時には帰宅)---自分の経験からも、ドイツは日本より遥かに進んでいるとの実感を持っている。就業環境などは雲泥の差である。
フランスの強みは、
①地の利がいい(農産物に恵まれている)
②教育が素晴らしい---幼稚園から哲学を教えている(物事に疑問を持つこと)。読み書きソロバン(国語、算数)及び哲学重視
③文化(最上の安全保障)だけでなく、外交的手腕がある---国連の常任理事国になっている
強みのある仏・独率いるEUは強い。日本はアングロサクソンになびいてきたが、1864~1868年の幕末には、フランスは日本の近代化に大きな影響を与えた。横須賀に作った造船所もその一つである。日本の英語教育の在り方にも問題を提起していた。
結論としては、EUを離脱しようとしているイギリスは、アングロサクソンの呪縛にかかっており、フランス・ドイツを中心とするヨーロッパは、まさに、日本人が考えるほどヤバではなく、EUの底力を見誤るとこれからの世界は読めないということであった。久し振りに世界の政治動向の話を聞いたが、大変勉強になった。
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