1月3日、BS-TBSの「林修の浮世絵大名画ミステリーSP▼北斎、広重、歌麿、写楽…浮世絵の謎に迫る!」を興味深く見た。2時間近い番組だったが、引き込まれるように見てしまった。前半は、葛飾北斎の代表作「富嶽三十六景」の中の最高傑作と言われる「神奈川沖浪裏」にまつわるミステリーであった。北斎がこの最高傑作を描いたのは、なんと70歳過ぎで、そこに至るまでの軌跡を解き明かしてくれた。40歳頃から波の描画を研究し始め、挫折を繰り返しながら、努力を重ねて、その域に達したようである。70過ぎた者にとっては、勇気づけられるものがあった。晩年は、肉筆画をいっぱい書いていたようであるが、89歳の時に描いた「大鳳凰図」は、八方睨み鳳凰図ともいわれ、本堂(長野県の岩松院)の天井を実際に舞っているかのような迫力を持つ肉筆画である。また、90歳で亡くなる3ヵ月前に描いた「富士越龍図」という最後の作品も目を引いた。
後半では、歌麿の美人画に潜むミステリーや歌川広重の「東海道五十三次」の中でも最高傑作と言われる「蒲原夜之雪」にまつわるミステリーが紹介された。温暖な蒲原になぜあんなに雪を降らせたのか詳しく解説してくれた。蒲原の作品が描かれたと思われる場所は観光スポットにもなっており、何年か前に現地に行ったこともあるので、よけい興味を引いた。広重は、55枚(53プラス日本橋と京都)で一つの作品を作ったもので、朝昼晩、春夏秋冬等メリハリを付けていたので、蒲原の設定を冬の雪にしたようである。想像力豊かな広重は、すべてを見て回ったものではなく、想像力で描いたものもあるようである。我々を絵の中に引き込むように、まさに旅行ガイドブックになっているのである。当時、バカ売れして、新しい版木を使い、初摺と後摺で絵柄が変わっている作品があるのも面白い。
浮世絵に興味を持ち始めたのは、今から35年前、ドイツのフランクフルトに駐在していた時で、世界一の浮世絵収蔵を誇る酒井コレクションの方と知り合いになり、浮世絵展と摺りの実演を企画したことからである。海外での浮世絵の展覧会に積極的であったことを受けて、共催で実施したもので、いい経験ができたし、浮世絵にも興味を持つようになった。松本にある浮世絵博物館の屋根裏収蔵庫に入れてもらい、門外不出の浮世絵や春画を見せてもらったこともある。浮世絵展のお礼として、現代に摺った浮世絵を十数枚いただき、今でも我が家の居間や廊下の壁を飾っている。浮世絵は、ゴッホをはじめとして、外国の画家も強い関心を示し、彼らの作風に影響を与えたことも有名な話である。浮世絵を生んだ江戸時代の文化はすごかったと痛感する今日この頃である。再放送であったようであるが、とにかく知的好奇心をそそる素晴らしい番組であった。
画像は、北斎の作品の「神奈川沖浪裏」「大鳳凰図」「富士越龍図」及び広重の「蒲原」
YouTubeは、広重の「東海道五十三次」の55枚の作品 https://youtu.be/kQzNX-QfKO8
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