曇りのち晴れ。最低気温18.0℃、最高気温27.2℃。
孵化して毛蚕(蟻蚕)になった蚕。これから1眠までを「1令」といいます。
この時期は餌となる桑の葉を、蚕と同じ約3mmくらいに切り刻んで食べやすいようにするのだそうです。まるで、人間でいえば乳児期の離乳食のようだと思いました。
「掃立て」の瞬間です。毛蚕(=蟻蚕)たちが桑の葉の方に向かって這っていきます。
〈羽箒。羽箒とは鳥の羽を使用して作った小さな箒のこと。〉
「掃立て」は孵化した蚕に最初に桑の葉を与えることを言うのだそうです。(開拓の村解説シート「養蚕―3」の資料参照)
桑の葉を与えることを「給桑(きゅうそう)」と言い、桑の葉を近づけると、匂いをかぎつけて、そこへ向かって這っていくのを見ることができました。
「掃立て」について、本日配布された学芸員さんの資料には次のようにありました。
「掃立て」は孵化した毛蚕(けご)を蚕卵紙から羽箒で掃きおろし、蚕座へ移す作業を差す場合と、孵化させる前に種紙についた卵を羽箒を使って掃き落とす作業をいう場合があります。
実際に羽箒で卵を5回から10回ほど優しく触れると、卵から毛蚕が頭をだしてきたのでした。刺激により、孵化が促進したということでしょう。
間近に蚕の卵をみたのも初めてならば、孵化するところを見たのも初めてでした。
教えられたわけでもないのに桑の葉に向かっていく姿は本能とはいえ、大した能力に思えます。
蚕は今から数千年前、中国で飼われるようになり、以来、人間によって飼い慣らされ続け、カイコ蛾(成虫)は羽が退化して、自力で飛ぶことができなくなったそうです。
幼虫も与えられた餌(桑の葉)から移動することなく、繭作りのときに自分が気に入った場所へわずかに移動するくらいとのこと。
彼らの命と引き換えに絹糸が生産され、私たちの生活が豊かに彩られてきたのでしょう。
蚕の誕生が感動的なものだっただけに、カイコの一生が何だかせつないものに思えたのでした。