もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

米中関税戦争とAIIB

2018年08月24日 | 社会・政治問題

 米中双方が、1800億ドル相当の品目に25%の追加関税を課す第2弾の関税措置を発動した。

 これで第1弾と併せて双方5000億ドル相当の品目が高関税の対象となるが、アメリカは更に2千億ドル相当の品目に高関税を追加する第3弾を用意しており、そうなった場合中国は相当する報復関税品目が無いという最終局面まで進行せざるを得ない見通しとなった。流石に米中双方ともに、共倒れを懸念しての会話機運醸成も観測されているが、ここにきて中国がWTO(世界貿易機関)への提訴を企図していることが報じられた。しかしながら、スプラトリー諸島の領有権を巡る国際司法裁判所の判断を無視し続ける中国が、関税紛争について国際機関の仲裁を求める図式には苦笑する以上に”利用できるものは何でも利用しようとする”鉄面皮のしたたかさと驚かされる動きである。中国は時間稼ぎをして、トランプ大統領の任期切れ・再選失敗を期待して任期残りの2年を耐え切れば事態は改善できると考えて、選挙に曝される大統領制度の脆弱性を突く戦法を執っているものと思う。ここで注目しておかなければならないのは、アメリカが関税障壁凍結を条件にしてEUに対してAIIB(アジアインフラ投資銀行)からの撤退若しくは資金拠出の凍結や引き上げを迫る事態である。アメリカはEU諸国の軍事費の増強要求ではある程度満足したが、更なる中国封じ込めの手段として、アメリカ主導のIMFに敵対するAIIBの力を削ごうとすることは充分に考えられる戦術である。米中関税戦争で日本はまだ致命的な余波を受けていないが、アメリカとEU間の関税障壁が解消されれば日本は致命的な打撃を受けるとことになると思う。

 習近平主席が恐れなければならないのは政敵の台頭と腹心の離反のみであり、国民の不平・不満・空腹は情報統制と強力な警察機構で抑え込める全体主義の独裁国家の強点には驚かされる。常に支持率と選挙を意識しなければならない民主国家の指導者の目にはうらやましく映るに違いない。