杤木家今市市(現日光市)の小1少女殺害事件の控訴審で、東京高裁が異例の判決を行った。
1審の宇都宮地裁の裁判員裁判での無期懲役を破棄したが、罪状は認めて改めて無期懲役を宣告した。1審判決破棄の理由が、裁判員裁判の過程で検察が提出した「自白の録画」を証拠としたことが違法であるという事らしい。確かに映像は文字に数倍する情報を提供するといわれており、裁判員に及ぼす影響は大きいと思う。警察での違法な取り調べによる冤罪を防止するために取調べの可視化が必要として弁護士会等が要求し、多額の予算で録画録音設備を整備したものであるが裁判で検察側は利用できないという事である。もし、違法な取調べによる自白の強要があったと弁護側が主張した場合には、録画資料は弁護側の証拠としては認められるのだろうか。検察の一部には、控訴審を担当した裁判官の過去の判決例を絡めて、今回の例を個人的な見解と捉えているらしいが、上告審では最高裁が「録画資料も検察側証拠として認める」という判例を示して貰いたいものである。なぜなら、膨大な検察調書を熟読して読み解くことに習熟していない1審の裁判員には映像の方が分かり易く、かつ活字離れが顕著な若年者や集中力持続に衰えた高齢者にとっては検察調書を読むことすら苦痛と感じるに違いないと思うからである。
事件の被告は現在36歳。無期懲役が確定したと仮定した場合、未決拘留期間を含めて出所できる時には既に60歳を超えているので、実質的には終身刑に等しいものと思われる。一般的な苦楽を味わうことなく大半を刑務所で過ごす人生、死刑制度を廃止若しくは凍結した欧米からは、終身刑は「人道上、死刑にも勝る残虐刑」として死刑制度を見直す動きも伝えられている。また、小児性愛嗜好はいかなる更生プログラムでも矯正できない性癖ということも統計的に示されているらしい。こう考えられると、無期懲役そのものの適否も考えなければならないと思う。