もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

マスクの配給と買い占めを学ぶ

2020年03月05日 | コロナ

 マスクの高騰・配給やトイレットペーパの買い占め・品薄が報じられている。

 大東亜戦争前後に存在した配給制度や物価統制令は自分も歴史でしか知らないので、有事に一般国民を守るための諸制度について勉強した。戦前の配給制度は、1938(昭和13)年の綿糸配給統制規則による綿糸の消費量規制に始まり、以後、39(昭和14)年の電力、40年の砂糖・マッチの切符制、41年の米穀配給制、42年の衣料総合切符制と続き、日用品から生産資材に至るほとんどの物資が統制配給の対象であったとされていた。消費物資を統制配給する方法は、各世帯に人数に応じた切符を予め各家庭に交付しておき、それと引き換えに物資を渡す(購入)切符配給制であったが、軍需工場等の過酷な労働を強いられる従業員に対しては「特配」も行われていたそうである。物価統制に関しては、1939(昭和14)年の価格等統制令(勅令)に始まり、戦後のインフレ抑制のための物価統制令(昭和21年勅令:GHQの指示であったためにポツダム勅令と呼ばれているそうである)に引き継がれた。このように、戦中・戦後は強力な需給統制が行われていたが復興の進捗に応じて順次統制の範囲が縮小され、配給制度及び物価統制の精神と範囲は1973(昭和48)年に制定された「国民生活安定緊急措置法」に置き換えられたと理解したが、現在でも唯一大衆浴場の入浴料だけは同法によって規制されていることは驚きであった。また、1973(昭和48)年の田中角栄内閣「日本列島改造」に触発された狂乱物価を抑制するために成立した「生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律」もあり、生活2法とも称されるこれら二つの法律で生活関連物資等の価格と供給の安定等を図り、国民生活の安定が確保されているそうである。チケットの高額転売などもこの法律で規制されているようであるが、物流が生産者→問屋→消費者と云う整然としていた時代には適応できた生活2法もネット販売や直販が並行している現在では機能不全の状態であるように感じられる。戦前の配給制度が運営できた背景には、国家意思を末端まで浸透させる隣組という他律・相互監視の制度があり、さらには、「欲しがりません勝つまでは」「戦地の兵隊さんの苦労を思えば」との国民の自制心が大きかったと思うが、今では自治会は任意加入であり民心も自分本位に変質して総理大臣や政府の要請など「どこ吹く風」の有様であることも、生活2法が完全に機能しない原因かとも思える。本日の産経抄で知ったことであるが、東日本大震災時トイレットペーパーを2袋買ってきた母親に「みっともない」と1袋返品した高校生がいたそうである。この「みっともない」という言葉が死語になっていることも、現在の買い占めや小売店の店員に対する暴言を助長しているのかも知れない。

 配給と云えば、主として開発途上国における食糧等の配給が思い出されるが、先進国にあってもガソリンの配給(購入制限の意味合いが大きいが)を行った例もあるそうである。また、配給については多くの概念があり、貨幣支給も配給の概念に含まれるようで、低所得者向けの生活一時金の支給、生活保護、児童手当なども配給の範疇に含まれるという考えもあるらしい。ともあれ、政府が決断したマスクの配給(需給統制)が機能することを祈るものである。