防大卒業式の模様と任官拒否者の存在が報じられた。
今次の卒業生は417名、任官拒否者は35名であった。卒業式で安倍総理は、自衛官が高い士気を保ち得る環境整備のための憲法改正推進を説くとともに、卒業生に対しては日米紐帯の強化を求めるよう訓示したが、卒業生諸氏も多くの国民が望んでいるように精強自衛隊の指導者若しくは中核として成長することを期していると思う。一方、毎年出来する任官拒否者については、背景や実情を知らなかったのでネット上に残っている任官拒否者の主張を拾い読みした。その理由は雑多であるが、多くは自衛官に任官するよりも民間企業に就職する方が自分の才能を伸ばせる、又は、社会に貢献できるということに集約されるように感じられた。自分の能力や社会への適合性を把握できていない18歳高校生が軍学校に入校し自我を認識した結果の任官拒否と云えばある程度の説得力を持っているようであるが、拒否行動を美化し、正当化しようとする主張に思えてならない。任官拒否者の述懐には「2年生頃から任官拒否を決めて就活していた」とするものもあることから、彼等の多くは比較的早期に任官拒否の意思を固め、卒業資格を得ての任官拒否であることが推測できる。防衛大学校の名称が示すように、防大は準大学であり国連統計等では高卒者として扱われるが国内では大卒者として処遇されことから、彼らが真意を隠してでも防大卒の学歴が欲しがったことは容易に想像できる。現在、防大卒業時に任官拒否した者には250万円(ネット上で知り得た2012年資料)の返還金支払い、任官後の早期退職者については勤務年限に応じた減額返還金の支払いが定められているが、甘過ぎるように思える。学生一人当たりの教育経費を試算し、防大生よりも遥かに高額の軽費がかかっている大学が存在することを指摘して「いわゆる食い逃げ」には当たらないと主張する向きもあるが、そもそも防大が軍幹部養成を目的としているという趣旨に照らせば、軍幹部にならない学生を卒業させることは誤りであり、卒業式前日であろうとも任官拒否を表明した時点で公務員免職・退学させるべきであろうと考える。しかしながら、任官拒否者の中には学力・体力・団体生活不適合等の諸事情も考えられることから、3年生進級時点(概ね成年)で踏み絵を行い、その時点での任官拒否者は自主退学扱いとする程度の緩和策は許容できると思うが。
軍とりわけ幹部に求められるのは、至高の忠誠心と無私の自己犠牲である。時代錯誤と呼ばるが、明日の日本と家族を含めた民族の安寧を信じて散華し、生還を度外視して敵艦に突入した軍人が存在したのは、歴史的にはつい昨日のことである。100年弱の期間を過ぎて忠誠心と無私の観念がない青年を、士官学校卒業生として世に送り出す不条理が不条理とされない現実は、任官拒否者以上に憂うべきであると思うが。