恒例の教科書検定結果が報じられた。
興味を持っている中学校社会科の歴史教科書では、一時下火となった自虐史観が息を吹き返した感がある。南京事件や3.1独立運動については中国・韓国のプロパガンダの引き写し、従軍慰安婦や徴用工については河野談話を引用したり労働環境の悲惨さ強調することで暗に強制を連想させる記述が検定を合格し、自虐史観払拭を企図した「新しい歴史を作る会」が編纂した教科書は、年度内再検定申請の道も閉ざされた一発不合格・門前払いとなっている。この変質の根本は、教科用図書検定調査審議会(以下、検定委員会)委員の信条の投影であろうと推測する。検定委員会の委員名は公表されているが、誰が・どの部門の検定に当たるのかは明らかにされていないし、審査の内容や不合格とした詳細も出版社には通知されるであろうが、一般には公表されないに等しい。我々も特設会場に足を運べば知ることができるのかも知れないが文科省がHPで公開しているのは、局外者には不明の受付番号を付した件数のみの概要であり、それも小学校用の物のみである。この不透明な密室審議は常に指摘されるが、一向に改められる形跡がない。一般的に云われることであるが、現在の考古学・社会学・歴史研究は、東大総長であったマルクス経済学者大河内一男氏のフィルターがかかっているとされる。大河内氏の目を通して眺めれば、人類史的には些末な南京事件や3.1独立運動は書かなければならない出来事で、八路軍の奮戦を特筆しなければならないのであろう。教科書検定を透明化し、検定意見書や検定結果の詳細を公表して歴史教育の方向性を広く国民が共有することは文科省の責任であると考えるが、検定委員を選定する文科省もまた大河内史観の支配下であるならば、この閉鎖性も当然に思える。韓国では国定教科書の執筆者が反対勢力からの個人攻撃にさらされることが報道されるが、日本では執筆者が攻撃されることは報じられないので、反対者の怒りを文科省検定委員会という実態の判らぬ怪物に向けさせることで事態紛糾の鎮静化を図っているのだろうと邪推している。ちなみに文科省の「初等中等教育局教科書課」に何度電話しても繋がらないのは、反対意見の殺到を抑止する手段であるのかも知れない(笑)。
教科書の執筆者は実名を教科書に明記しているので記述内容に責任を持っているものと思うが、ミシュランガイド調査員ではあるまい検定委員が覆面のままであるのは余程後ろ暗く世間に憚る活動をしているのだろう。歴史は日本国民の物であり、天安門・青瓦台の顔色のみ気に掛ける象牙の塔内で決めるものではないと思う。この悪弊を改めるには、総選挙で文科相経験者をすべて落選させるしか方法がないようにも思えるが、比例復活当選の道がある限り不可能と慨嘆するところである。