もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

国防生産法を知る

2020年03月29日 | 軍事

 トランプ大統領が「国防生産法」に基づき、自動車メーカーであるGM(ゼネラルモーターズ)に人工呼吸器の生産を命じたことが報じられた。

 国防生産法を知らなかったので調べてみた。法律そのものは見つけられなかったが、国防生産法は朝鮮戦争が勃発した1950(昭和25)年に成立した法律でありながら、アメリカの連邦緊急事態管理局が「軍事・エネルギー、宇宙、そしてアメリカの国土の安全を保障するプログラムを支援するため、米国産業基盤から資源供給を促進、拡大させる大統領の主要な手段」と説明していることから、戦争を含む国難に際しては伝家の宝刀的な法律であろうと推測する。朝鮮戦争勃発時のアメリカは、第二次世界大戦で使用した兵器で溢れ、長期戦の後遺症として軍備縮小・厭戦機運が高まったために軍需産業は規模を縮小し、朝鮮戦争による急激な所要拡大要求に応じることができなかったため、兵器及び軍需品製造の原料・資材・人員・輸送・資金を国家が管理して生産力を高めるという共産主義社会の国営企業のような製造システムを早期に構築する必要があったものと推測する。同法はそれ以後も50回近く発動したとされており、2011年にはオバマ大統領が電気通信会社に機器の提供を強制させるために発動されたとされている。今回の対象は人工呼吸器と報じられているが、マスクや防護服についても指示がなされたとの記事もあった。日本でも医療用マスクの増産が要請されたが、あくまで資金援助を含む要請で民間企業の善意に俟つという図式であり、成果が表れるスピードは国防生産法に劣ると考える。人工呼吸器の仕組みは知らないが、おそらく精密機器に類するものであろうことから技術・特許等の面から自動車メーカーが短時間で生産できるものではないだろうが、GMの技術、生産設備、人員を考えれば供給量の早期拡大には繋がるであろうし、流通・配分を国家管理することで必要な場所に機材が届くのは確実となるだろう。

 また、ネット上には左傾者らしき「(国防生産法は)トランプ大統領にアメリカ企業全てを牛耳れる全権を与えられます。」や「コロナの影響が長引く場合、食料も配給制になるなど「なんでもできる法律」とも言われています。」という書き込みもあるが、そうなったとしても深刻な食糧危機に対処するための配給制度がない日本、必要機材生産の方向付けをできない日本、果たしてどちらが有事における国民の安全確保に機能するのだろうか。集団的自衛権を容認する安保関連法が成立して4年が経過したが、審議の過程で野党が戦争法と主張した戦争は起きていないし徴兵制復活の兆しすらない。法律制定後には他国に亡命するとした小西洋之議員は今もって議員活動にいそしんでいる。識者や野党は徒に物事の負の面を拡大して印象操作することを得意技としているが、国防生産法が目指すところを冷静に見れば正の部分が浮上してくる。日本も緊急事態条項を憲法に規定し、国難を乗り切る準備を開始すべきではないだろうか。