オーム真理教が起こした松本・地下鉄サリン事件から25年が経過した。
その後オーム真理教は、主流派(Aleph((アレフ)、山田らの集団、ケロヨンクラブ)と上祐派(ひかりの輪)に分かれて活動を継続しており、各教団を合わせた2016年データでは信者数は1650人、資産額7億円とされている。また、教団は15都道府県に35の施設を保有しており、活発な活動によって毎年100人前後の信者を新たに獲する等信者数及び資産額ともに右肩上がりの漸増傾向にありながら責務を負わされた被害者補償は漸減しているとされている。公安調査庁は、前述のオーム真理教の後継教団に対して「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(団体規制法」に基づく観察処分を継続しているが、勢力の拡大防止には至っていないのみならず、刑死した麻原彰晃の誕生日や死刑執行日(命日)の7月6日には、刑場である東京拘置所周辺での祈祷や集会も顕在化し往時の公然活動に戻ったともされている。不確かな情報であるが、信者の学歴は大卒 37.8%、短大卒 7.0%、専門学校卒 16.7%、高卒 25.2%とされ、一般社会以上に高学歴の構成となっている。入信動機も麻原の「本を読んで」や「教義に共感して」と積極的・自発的入信とするものが、従来の新興宗教に見られる「勧誘されて入信」という消極派を上回っているようである。高学歴の積極入信者が狂信的かつ行動的であることはサリン事件のみならずイスラム原理主義指導者が起こすテロにも共通するもので、オーム真理教後継教団もかっての狂信テロ教団に変質する可能性が拭えないように思える。国際的に日本は、1975年のクアラルンプール事件でテロ犯坂東国男らを超法規的措置で釈放したことによってテロ犯人に甘い国とされ、松本・地下鉄サリン事件を起こしたオーム真理教に破防法を適用して教団の解散を命じなかったことによって国内のテロ組織を容認・温存・庇護する国と認知されてきた。信教の自由、解散させれば被害者補償が困難になる、過去に適用した団体がない、等の的外れで退嬰的な理由で教団に対する破防法適用を見送った公安委員会とそれを支持したメディアは信者・資産の漸増と補償の漸減という現実をどのように見ているのだろうか。
中曽根康弘元総理は、折に触れて「政治家は後世の被告席に立つ覚悟を持たねばならない」と述べていたが、もしオーム真理教の後継教団が尖鋭化してサリン事件と同様のテロ行為を行ったとしても、被告席に立つべき当時の国家公安委員長や公安委員の名前すら知らない。現在のオーム真理教の蠢動は、司法と行政の事なかれ主義が責任を後世に押し付ける結果しか残さないことを物語っていることを教えているように思う。伝家の宝刀も「抜いてこそ価値」を発揮するもので、抜かなければ折角の宝刀も宝の持ち腐れとなり、長年さやの中に放置していれば、抜いた時には時代遅れの鈍ら刀と化しているかも知れない。