もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

骨太の方針を読んで

2022年06月08日 | 防衛

 閣議決定された「骨太の方針」を読んだ。

 これまで多くの自由主義国家と自民党政権が推し進めてきた「新自由主義的小さな政府」の希釈・修正を目標とし「岸田ドクトリン」と位置付けられることを期待してのもので、記述された全てが今すぐ実現するものではないが、製造業とITを強靭化してサプライチエーンからの中国切り離しを達成するために頑張って欲しいものである。
 特に、市場原理に期待していたために悪化した脱炭素推進や経済格差の是正・解消のため、民間に対して政府が一定の関与に踏み切らざるを得ない現状では、「ある程度の大きな政府も已む無し」と考えざるを得ないものの、枝野構想ほどには関与して欲しくないと思っている。
 外交については、附則的扱いではあるが台湾に言及したことは評価できるものと思う。日本最西端の与那国島は台湾島から約110kmで、台湾有事にあってはそれこそ短距離ミサイルの射程圏内にあるのみならず、台湾人にとっては最も近い避難先であることを思えば当然に心しておかなければならないと思う。
 安全保障については、来年度予算の積み上げについて、防衛費を概算要求の枠から除外したことも大きいと思っている。防衛費については常々「世界〇位の額」と取り沙汰されるが、多くの国と違って日本の防衛予算は自衛隊員の「人件・糧食費45%」、民間に償還される「基地対策費10%」を含んでいるために、真の防衛費は半額であるとされてきた。今回の措置によって新装備の取得や弾薬備蓄が可能となるために、ミサイル防衛力や継戦能力向上の緒に就けると思っているが、これらは単年度で実現できるものではなく、少なくとも数年は継続して欲しいものである。

 政府の「骨太方針」が閣議決定された背景には公明党(山口那津男代表)の軟化・転向もあると囁かれている。改憲と防衛費増額には慎重と云うよりも反対の同党であるが、究極のポピュリズム・風見鶏政党であればウクライナ事変を契機とした突風に敏感に反応しただけで、本質は変わらないように思える。
 香港式による中国への同化・吸収を目指すとしていた台湾国民党であるが、親中では統一選挙を戦えないとの思惑から親米姿勢を示すために代表団をアメリカに派遣したものの、アメリカ政府は冷淡で閣僚はおろか主要官僚にも面会できていないようである。
 政党要件の維持を賭ける瀬戸際社民党は「戦争反対・9条改憲阻止」で今回の参院選を戦うとしている。
 政争・政局しか眼中にない立憲民主党は、細田衆院議長不信任を国会に問うとしているが、文春砲のスキャンダル疑惑報道のみでする不信任案提出には維新・国民民主は棄権する可能性が高く、もしかすると反対に回るかもしれな様相を見せている。
 世界の変化に対して、真剣に幹逢う人、形だけでも何とか追随しようとする人、変化が無いものと振舞う人、従来に固執する人、まさに十人十色の生き様を見せてくれる。